中国『新型冠状病毒肺炎診療方案（COVID-19診療ガイドライン）』（試行第7版）」（以下、『ガイドライン』と略する）に推奨される漢方の解読シリーズ第3弾。
（元々は『ガイドライン』に従って、推奨される漢方を順番に紹介する予定だったが日本「緊急事態宣言」の解除により、「回復期」に使われる処方を繰り上げて先に紹介する）
本シリーズは漢方の解析で、実際の応用は医師、薬剤師又は登録販売者にご相談ください。
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【処方】四君子湯
中国漢方老舗「同仁堂」に販売される四君子湯生薬
【出典】『太平恵民和剤局方』（1151年）
【処方名由来】「君子」は徳が高く品位のある人、人格に優れた人を指す。
処方を構成する四種の生薬がすべて中和的なもので、「温」だが、「燥」の恐れがない。「補」ができるが、「峻」（強すぎ）がない。
穏やかで、落ち着く感じが与えられる処方で、「四君子」と名付けられた。
【処方解析】
君薬の人参が脾肺機能を強める効果がある。現代臨床では、ほとんど「党参」で代用する。
臣薬の白朮は脾臓の働きを促して、湿邪を取り除く役割がある。
佐薬の茯苓は白朮の働きを強める。
使薬の甘草は中焦の脾胃の消化機能を整える。
脾胃の消化機能が改善されると、気血などのエネルギーも作られる。
そのため、「四君子湯」は歴代の医家に「補気の基礎方剤」と位置づけられている。
四君子湯を土台に「香砂六君子湯」、「参苓白朮散」などの名方が輩出された。
【効能効果】胃腸の消化機能をよくする
【適応症】消化機能が弱くなって現れた顔色が悪くて艶がない、声が低い、食欲がなく、
疲れやすい人の胃腸虚弱や胃もたれ、胃のチャポチャポ、お腹のゴロゴロ、嘔吐、
軟便や下痢な、舌質が淡い、脈が細緩などに用いる。
現代薬理研究によると、四君子湯が胃腸活動調節、消化吸収促進、腸粘膜免疫機能増強、DNA合成調節、抗腫瘍、抗疲労、酸欠防止などの作用がある。
臨床ではよく慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、機能性消化不良、
免疫調節などの病気に使われている。
【COVID-19への応用】
中国『ガイドライン』に回復期「肺脾気虚証」の治療に推奨されている。
「息切れ、倦怠感、食欲がない、悪心嘔吐、胃がつかえ、排便無力、大便希薄、すっきりしない。舌が淡胖、苔が白膩」が見られる時、党参15g、茯苓15g、炒白朮10g、甘草6g（四君子湯）に補気を強める「炙黄蓍30g」、去痰ができる「法半夏9g、陳皮10g」、去湿ができる「藿香10g、砂仁6g（後下）」を加えて対応する。
回復期は退院された後をさす。
日本では、厚生労働省により、「これまでは症状が軽くなってからPCR検査を2回以上行い、連続で陰性」と定めた退院基準が先日、「▽発症から14日が経過し、かつ、▽症状が軽くなってから72時間がすぎる」に変わった。
また、宿泊施設で療養する軽症の患者は新たな基準では「すべての場合で検査は不要となり、発症から14日、かつ、症状が軽くなってから72時間で解除できる」とされている。
これで、漢方の活躍が益々広がっているだろう。
【日本の代用商品】
中国『ガイドライン』に掲載される回復期「肺脾気虚証」に使われる処方の生薬構成から見ると、四君子湯のほかに去痰の二陳湯及び除湿の生薬も含まれている。
日本での漢方製剤対応は四君子湯（或いは「健脾散エキス顆粒」、「健胃顆粒」）のほかに、温胆湯（二陳湯の代用）、藿香正気散（勝湿顆粒）（去湿生薬の代用）での対応を薦めたい。
ちなみに、藿香正気散は既に紹介したが、二陳湯は次回の紹介予定。
【質問解答】
Q 四君子湯と香砂六君子湯（健胃顆粒）、参苓白朮散（健脾散エキス顆粒）の違いは？
A 三者（方）とも「益気健脾」の効果があるが、
四君子湯は補気をメインにして、「脾胃虚弱」（消化機能の虚弱）を治療する基礎処方とされている。
香砂六君子湯（健胃顆粒）はまた、「和胃、理気」の働きを持つから、悪心、嘔吐、ゲップ、シャックリなどの「胃気上逆」の症状がある場合に最適。
参苓白朮散（健脾散エキス顆粒）はまた、「滲湿（除湿）」の働きがあるから、軟便、下痢などの「湿盛」の症状が見られると、最優先に使うべき。そのほか、「培土生金」（脾を補って、肺を強める）の「保肺」効果を持って、ほかの処方にない特徴があるから、COVID-19の回復期によく見られる肺虚証・脾虚証にはファストチョイスとして考えたらいかがだろう。
アップされたブログ：
https://ameblo.jp/gomishi28/entry-12589146823.html
【COVID-19に効く漢方②金花清感顆粒】
https://ameblo.jp/gomishi28/entry-12592365592.html?frm=theme
【（最新版）新型肺炎漢方診療ガイドライン」（試行第7版）】