私の人生には、時々、物語にしか出てこないような人物が登場する。そのひとりが、火炎放射器だ。もちろん武器じゃない。けれど、彼女と関わった人は誰もがこう思うだろう。「この人の発する言葉と態度は、まるで火炎放射だ」と。そんな名前がついたのは、つい最近のことだ。ただの冗談のつもりだったのに、振り返ればあまりにも的確すぎて、今ではその呼び名以外に言いようがない。いろんなタイプの人と出会ってきたけれど、この衝撃は群を抜いている。

 

彼女の前に立つと、こちらの言葉はあっという間に蒸発してしまう。正確には、言おうとした瞬間、熱風のような彼女の"なにか"に押し返されてしまうのだ。こちらの声が弱かったわけでも、覚悟が足りなかったわけでもない。ただ、彼女の放つ温度が尋常ではなかった。彼女は常に「正しい場所」に立っているつもりだった。自分こそが光を運ぶ存在で、こちらはその光を受け取るべき"迷える者たち"にすぎないという。

 

だから彼女の言葉は、いつだって上から下へ落ちてきた。打ち消すように、断ち切るように、ときに私の胸の奥に当たっては、痛みだけを残して消えていった。けれど最も驚いたのは、その激しさの裏側に本人の自覚がまったくないことだった。ただ「私は正しいことをしている」と信じて疑っていない。だからこそ、始末が悪い。彼女は、優しさのつもりで火を放ち、励ましのつもりで焼け跡を増やし、癒しのつもりで人を黙らせていった。そして私も、その熱の中に立ち尽くしていた。

 

けれど、これは少し意外かもしれないが、私は燃えなかった。熱に晒され、息が詰まり、言葉が引っ込む瞬間はあった。けれど、私は黒焦げにも、灰にもならなかった。むしろ、あのときの私は、自分の中心にある"燃えない核"を知ったのだ。そして、私が火炎放射器の前に立って焼かれなかったという事実が、彼女を裏切ったようだった。最後に彼女は逆襲してきた。私を貶めようとしたその一撃で、私はようやく理解した。彼女もまた、寂しい人なのだ。