第2話 | ボツ企画書の夜明け

ボツ企画書の夜明け

ドラマのボツ企画書たち。彼らがいつか公共の電波に乗る日を夢見て。

2010年11月5日。
政府がある声明を発表した。
今や、どの化粧品にも配合されている成分「キレイニナール」に、
原因不明の皮膚病を誘引する可能性があるというのだ。
女性は、同成分が含まれる化粧品の使用をただちに止めるようにとのこと。
そして、化粧品会社は早急に同成分を使用しない化粧品を製造せよとのこと。

新聞、週刊誌の紙面はすぐさま、このニュースで埋めつくされた。
「キレイニナール」に皮膚病を誘発する原因があることを、
化粧品製造会社は知っていたのか。それはいつからなのか。
メディアの犯人探しが始まった。

そしてインターネットの世界では、掲示板、ブログを通して
個人の情報交換が行われた。
「最近、皮膚が荒れてきた…」
「シナチク化粧品の商品を使ってた友達が病気になった」
「友達の友達のお父さんが巨大化粧品会社の社長なんだけど、
キレイニナールが問題のある成分だと1990年代から分かってたんだって」

皮膚病の予防検診をうたった新手の訪問詐欺も、全国各地で発生した。

「キレイニナール」が世間を騒がせているなか、
化粧品会社からの収入が、全体の●割を越えるテレビ業界だけが、冷めたていた。

テレビは25~35歳の女性をメインターゲットにしている。
彼女たちが一番視聴している時間帯、21~23時など、
ほぼ全ての番組に化粧品会社がスポンサーとして番組制作資金を提供し、
販売促進CMを放送電波に乗せていると言っても過言ではない。

そんな冠スポンサーに気をつかってか、
テレビ業界だけが、この事件に関して及び腰だった。