昨年の12月に国税庁より『大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱い』が発表されました。


年々、大工・左官・とび職等の就労形態が多様化しているため、取り扱いを新たに整備したようです。


明確に事業所得又は給与所得に区分できるならば構いませんが、実務では明確に区分できないことも多々、あります。その結果、大工・左官・とび職等で個人事業者に支払う報酬の所得区分が事業所得なのか?あるいは給与所得なのか??という問題は税務調査でも度々、問題となり、裁判に発展したケースもあります。

 

では、なぜ法人と税務当局の認識が乖離するのでしょうか?

それには、いろいろな理由がありますが、大きな理由としては、

ある法人が大工等に報酬を支払った場合、その報酬が大工等の事業所得に該当する場合は源泉所得税も発生しませんし、支払った金額は消費税法の控除対象仕入税額にも該当します。


 これに対し、大工等の給与所得に該当してしまうと、源泉所得税の徴収義務が発生するばかりか、消費税額の計算上、控除対象仕入税額に含めることも出来なくなります。

 

今回の国税庁からの発表では、これまでの問題点等をふまえて、事業取得や給与所得の区分が明らかでないときは、下記等を判定材料とするとしています。

①他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。

②報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。

③作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。

④まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。

⑤材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。