木曜日に観に行った映画の感想です。
※ネタバレ含みます。
ダンサー・イン・ザ・ダーク
2000年に劇場公開された作品の4Kデジタルリマスター版のリバイバル上映です。
1960年代のアメリカ、チェコ移民の主人公(セルマ)は劣悪な工場で働きながら女手一つで息子を育てています。
アメリカに来た理由、息子の誕生日プレゼントも買わないほど切り詰めて貯金している理由は、息子に目の手術を受けさせる為。
自身も目の病気を患い視力を失いつつあり、遺伝性の病気の為、手術をしなければ息子もいずれ失明するのです。
その後、失明していることがバレて仕事をクビになり、貯めたお金は隣人(大家)のビルに盗まれ、お金を取り返しに行ったセルマはビルを殺してしまいます(ここにも悲しい事情あり)。
しかし、裁判では一切の事情を話さず(息子に手術を受けさせる為)、死刑判決が下ります。
と、まぁ、ストーリー自体はただの不運な移民のお話で、どんでん返しがあるわけでもなく、淡々と不幸な不条理な人生を描くだけです。
この映画が特別な映画である所以は、この映画は、ミュージカルなのです。
悲劇のミュージカルと言えば、レ・ミゼラブルなんかもそうですが、
レ・ミゼラブルはストーリーの中に歌がある、歌にストーリー的な意味があるミュージカルなのに対して、
本作の歌シーンはすべてセルマの空想世界なんです。
不遇な現実と、ハッピーな歌(空想世界)の対比のせいで、余計に見ている方は辛く暗い気分になります。
辛い仕事場(工場)でも、視力を失った時も、殺人を犯した時も、セルマは自身の空想の世界では幸せに歌い踊ります。
ラスト、刑場に向かう107歩の道のりでさえ…
そして、衝撃のラストシーン…衝撃すぎ…
セルマは最期の最期に初めて空想の世界ではない歌を歌います(叫びますと言った方が正しい?)。
もう、涙無しでは見られない…
この映画の何がエグいって、それは主人公役のビョークの存在。
セルマ役はビョーク以外考えられない。
ビョークの純真無垢な天使のような妖精のような存在感。
空想の歌シーンは本当に圧巻です。
私にとってのビョークは、もはや神です。
歌シーンでのはぁ幸せ~
からの現実でズドーーーーン。

振り幅がデカすぎて、精神やられます。
私もセルマと同じく、空想の世界に浸って生きてきました。
私も、辛い現実から逃れたくて、空想に浸ってきたんだなぁと思ったら、
空想って楽しくて幸せなんだけど、現実に戻ったときの辛さがハンパなくなちゃっうんだなぁと…
この映画、観たのは2回目で、20年前も映画館で観ています。
で、今回リバイバルを知って、キャーーー
またビョークの歌が聴けるーーー
としか思わなくて、


はて?どんな話だったかな?たしか、たしか?なぜか死刑で終わる…気がする。気がする?ん?なんで?
くらい、話は覚えていませんでした。
20年経って、私もその間色々あって、ありすぎて、ただただビョーク神~と思って観ていたあの頃とは見方も変わったんだと思います。
相変わらず、ビョークの歌は最高っ‼️でしたけどね。
死刑執行が近づく中、面会に来たジェフ(お互いに好意を持っていた相手)に、なぜ病気が遺伝するとわかっていてジーン(息子)を産んだのか?と問われるシーン。
少しの沈黙の後、「赤ちゃんを抱きたかった」と。
子供を持ちたいと思うことに、理由なんてないですよね。
ただの本能ですよね。
ささやかな人として当たり前のその望みを叶えると引き換えに、彼女の人生は不幸な人生となったわけです。
私も自分の病気(精神疾患)や特性が遺伝するのでは…という不安を抱えています。
遺伝するにしても、その可能性を少しでも薄めたくて自分とは正反対の能天気な頭ピーマン(空っぽ)な人を選んで結婚したんです。
でも、その選択が今の私を苦しめている…
いずれ、娘が大きくなった時、私はセルマのように自分の命と引き換えにしても娘を守ることができるだろうか。
娘も私と同じで空想の世界に住んでるみたいなんですよね。
起きてるときも夢見てるんだよ~ってニコニコ顔で教えてくれたので…
私も娘の未来を守れる強さが欲しいです。
最後に、この映画を見るのはおすすめしません。
私はビョーク好きすぎて、ビョーク好き
が後味悪すぎるを上回りますが、

普通の人はかなーり落ちる危険があります。
精神的に脆い人にはおすすめできる映画ではありませんので、ご注意ください。