むかし あるところに ひとりの少女と ひとりの青年が いました
ふたりは 森の中の 木でできたおうちに ふたりで暮らしていました
木漏れ日が差す きれいな きれいな 場所でした
ふたりは 幸せでした
ある日 青年は出かけたまま 帰ってこなくなりました
少女は 彼が帰ってくるのを 待ちました
何かあったのではないか と思うと 心配で 涙が溢れてきました
その涙を拭いてくれる人は いませんでした
何日も 何日も 待ちました
晴れの日は 彼がいつ帰ってきても 気づくように 家の外で お花の冠を 作りながら
雨の日は 彼が濡れてしまわないように 傘を差しながら
雪の日は 彼が寒がらないように ふたり分の ココアを入れて 何度も温めなおして
待ち続けました
それでも彼は 帰ってきませんでした
少女は 決心しました
彼を探しに 旅に出よう
ちいさなポシェットに ハンカチと 少しのお金と 彼の写真を入れて
森から出るのは 大変でした
暗い道を歩いて 木の枝が服に引っかかり 跳ねた泥が服にかかり
足元の蔓に つまづいて 手のひらが 擦り傷だらけになりました
少女は 泣き出しました
すると キツネの子が 少女に近づいてきました
口に なにか草を くわえていました
「おじょうさん この草を つぶして 手に塗って」
少女は 言われたとおりにしました
草をすりつぶして 手に塗って ポシェットから ハンカチを取り出して その手に巻きつけました
大きな雄鹿が のそりと 姿をあらわして 言いました
「わたしの背中に 乗りなさい 森の外まで 乗せて行ってあげる」
少女は キツネの子と一緒に 鹿の背中に乗って 森の外を目指しました
なんだか うれしくなって 少しだけ 少女は 幸せになりました
少女が笑うと キツネの子も笑いました 鹿は歌を歌い始めました
その歌は 少女が知らない言葉で 歌われていました
・・・・・・
明るい光がまぶしい と思うと そこは森の外でした
「キツネさん 鹿さん どうもありがとう」
少女は ふたりに お礼を言いました
「わたしと一緒に 旅をしてくれませんか」
とお願いしましたが ふたりは 「それはできない ごめんね」 と言いました
少女は また一人になるのかと思うと 寂しかったのですが ふたりに感謝して 別れを告げました
ふたりは言いました
「あなたの大切な人が どうか見つかりますように それまで あなたが 無事でいられますように」
「ありがとう あなたたちのこと わたしずっと忘れない」
この手に巻かれたハンカチをみたら いつでもあなたたちが 励ましてくれているような気がする
ふたりと別れてしばらく歩いていると うしろのほうで 耳を切り裂くような 鋭い音が 聞こえました
なぜか 少女の目から 涙が溢れました
どうしてだろう なんで涙が でてくるの ?
今 なにが起きたのか わかるような わからないような 不思議な気持ち
ただ ひとつだけ
はっきりと 私の心が教えてくれた
「あのふたりは もういないんだ」
・・・・・・
少女は 気づいていませんでした
キツネや鹿が 人間の狩猟の 対象であることを
少女は 知りませんでした
人間の 心の闇を
・・・・・・
つづく・・・