忘れられない夜② | 秘密だけど大切な彼との日常

秘密だけど大切な彼との日常

何気ないけれど大切にしていきたい彼との日常をありのままに綴っていきたいと思っています。

通話ボタンを押すと

「もしもし?」

…懐かしい、そして大好きな声が聞こえた。

「もしもし?久しぶりだね」

緊張して声が震えるのを気づかれないように必死に明るく振舞った。

「そうだね、最後に電話したのたぶんもう半年以上はとっくに経ってるよね」

「うん。でも、桜井さんも元気そうで良かった。」

「うん、何とかやってるよ」

「仕事どう?ってか、今どこにいるの?家じゃないよね?」

「うん、今日は出張でホテルにいる」

「そっか。仕事頑張ってるんだね。楽しい?」

「楽しいよ。やっと一人で仕事任されるようになったし、やりがいもあるし」

「そうなんだね。何かすごく安心した。仕事楽しくしてるのかが気がかりだったから」

 

こんなたわいもないやり取りや、お互いの近況を話していると

半年ぶりに電話したと思えないくらい自然で心地よかった。

気が付くと緊張なんて無くなっていて、あっという間に一時間が過ぎていた。

 

そして、私がお別れメールをしたときの話になった。

 

「私がもう連絡取らないってメールしたじゃん?何で返事してくれなかったの?」

「いや、木村さんが決めた事だしそうするしかないのかなって思ったから」

「勝手に決めて怒ってたから返事くれなかったのかと思ってた」

「全然怒ってないよ。ただ、そのあとしばらくして元気?ってきたときは

何だこいつ、って思ったけど(笑)」

「そうだよね(笑)ごめんね。でも私の中であのメールは最後の賭けみたいなところも

あったから何でもいいから返事してほしかったな~」

私が冗談っぽくそう言うと、急に桜井さんが真面目な声になった。

「最後の賭けって事は、もう僕の事は思い出になってる?」

「え?」

「いや、最後の賭けって言ってたからもう吹っ切れたのかと思って。元気そうだし」

「…吹っ切れた訳ないよ。私はまだ桜井さんの事好きだよ」

 

咄嗟に出た言葉だった。

一言言ってしまうともう止まらない。

「お別れした日から私の気持ちは何も変わってないし、

桜井さんの事考えない日は1日だってなかった。

だから今電話が来てすごく嬉しかったし信じられない気持ちだよ」

…やばい、ぶちまけちゃった。

かなり気まずい雰囲気だよねこれ。

言った後に後悔していると

「僕もまだ木村さんの事が好きだよ。離れて1年以上経ったし

連絡も取らなくなって半年くらいになるし忘れないとって思ってたけど…

こんな事今までなくて自分でも驚いてるんだけど」

 

桜井さんからの思いもよらない告白に

涙が出るくらい嬉しかった。

でも、お互いの気持ちは同じ想いだったという事を確認出来ただけで

満足だったのか私も桜井さんもそれ以上何も言う事はなかった。

 

もう一生会う事は出来ないのかもしれない。

連絡だって、もしかしたら今日が最後になるもかもしれない。

でも、何故かそれで満足していた自分がいた。

 

離れても、声さえ聞けなくてもお互い忘れる事なんてないと分かったからだと思う。

以前のように、「桜井さんの事が大好き!」という情熱的な

気持ちではないけれど

でも、私の心の中ではきっとずっと桜井さんは大切な人に変わりはない。

それはきっと彼も同じ想いでいてくれるんだろう。

 

それが確認出来ただけで充分だった。

 

お別れメールをしても、ずっと忘れられなくてつらかったけれど

やっと、自分の中で思い出に出来そうな気がしていた。