退職 | 秘密だけど大切な彼との日常

秘密だけど大切な彼との日常

何気ないけれど大切にしていきたい彼との日常をありのままに綴っていきたいと思っています。

今日で彼がこの会社を辞める。

最後の日は私がいる事務所には来ず、県外にある本社へ行き

社長へ挨拶をしに行っていた。

 

最後に会社で会いたかったという気持ちもあったけど

会ったら泣いてしまいそうでホッとしている自分もいた。

 

仕事をしていると

「木村さん、ちょっと」

部長に呼ばれる。

「どうしたんですか」

「いや、今桜井くんが今本社にいるんだけど社長に

お願いをしたらしくて」

「お願い…ですか?」

「うん。彼、今度昇進が決まっていたでしょ。で、退職してその昇進の枠が空くなら

ぜひ木村さんを正社員にしてあげてほしいと頼んだそうだよ」

「え…?」

「木村さんは事務員として採用されてまだ二年目だけど

仕事も出来るし真面目だしこれからもここで働いてほしいからって」

「…」

「嫌いな社長に頭まで下げたそうだよ。まあ、頼んだからと言って

木村さんが正社員になれるわけでもないんだけどね。

でも一応こんな話が出たって事で、心に留めておいてもらえるかな?」

「分かりました…」

 

…本当に驚いた。

彼の大事な仕事を奪ったのは私なのに。

私がいなければこの会社でもっともっとやりたい事もあったはず。

こんな私の為に嫌いな社長に頭まで下げてお願いしてくれた。

部長が言っていた通り、こんなことで正社員になれるほど甘くはないし

実際、社長もそうとう驚いたらしくてポカーンとしていたらしい。

でも、そんなことはどうでもよかった。

彼が私の為にお願いをしてくれたこと。

彼のその気持ちが何よりも嬉しかった。

 

その日の夜。

彼にお礼のメッセージを送った。

彼は

「情報早いですね、もう耳に入ったんですか」

と照れ臭そう。

「でも、承諾はしてもらえませんでした。ごめんなさい。」

「そんな、謝らないで下さい。桜井さんのその気持ちが嬉しかったんですから」

「木村さんにはずっと仕事頑張ってほしいので」

「ありがとうございます。私のせいで桜井さんは仕事辞めないといけなくなったのに…

そんな風に言ってくれるなんて」

「そんな事言わないで。僕が会社を辞めるのは木村さんのせいではないんだから。

むしろ、辞めて良かったと思えるようにバリバリ働くから大丈夫!!」

そうやせ我慢する彼。

 

彼の気持ちが嬉しかったこの出来事。

何も期待していなかったけれど

この数か月後、私は正社員になる事が出来た。

他の社員さんから見たら異例の早さの正社員採用だった。

この時、もちろん彼に一番にお礼の連絡をしたけれど

「僕は何もしてないです。木村さんの今までしてきたことの評価ですよ」

と言ってくれた。

でも私は彼のおかげだと思っている。

 

 

彼がやりたかった事、彼に教えてもらった事をいつも思いながら

これからも彼が与えてくれた場所で働き続けるのだろう。

その場所を与えてくれた彼はもう近くにはいないけれど。