ああ

1ヶ月前はこんな気持ちではなかった。


サッカー部を休部した息子は

高校から帰宅したらさっさとシャワーを浴びて1時間の仮眠。

けたたましいスマホのアラームでホワホワ起きて

急いで早めの夕食を掻き込む。


出来てない課題を確認すると

開講の1時間前に愛車のペダルを駆って塾へまっしぐら。

早めに塾に入り、

出来ていない課題を講師に聞きながら仕上げるらしい。


塾から帰宅すると11時。


遅くなるから次は車で送ろうか?

夜食のうどんを煮ながら問いかける。

返ってくる答えは ノーサンキュー って分かっていても

ついつい聞いてしまう。


照れたように

部活に戻った時のために足を使いたいからね。

と話す顔を見たいから。


そして先週。

息子は早めの夕食をのんびり食べると

今から課題を仕上げるから1時間後に塾に送ってほしい

と、頼んでくる。


課題は自分で仕上げるようになった。

それは素晴らしい成長。

ギリギリまで課題をしたいからとの、車送迎のリクエストには断る理由はない。


だけど、

胸の奥がチクリとする。


体力作りの走り込みを最後に見送ったのは何日前か?


通学用のスニーカーの底に穴が空いたからと、

双子とショッピングモールへ。



 


娘はお目当てに近寄り、すぐに試着を始める。





息子は、いくつかシューズを手に取るものの

試着はせずに棚に戻す事を繰り返してる。


穴が空いてるんでしょう?

今日買って行こうよ!

私の掛け声に、

ゴニョゴニョと。

まるで真冬の東北人のように唇を動かさずに、何かを呟きながらスマホをなぶる。


息子はスマホ画面を私に見せて

もうさ、高いスパイクは要らないから

この店にはないスニーカーを買ってほしい。と。

かすかに唇を動かしたかは見ていない。


画面には黒いスニーカー。

娘のスニーカーの2倍の金額。


うーん。ちょっと高いよ。却下。

努めて明るく手のひらをヒラヒラ振ると、

息子はまた、唇を動かさずに何かを呟いた。


息子のスニーカーはまだ穴が空いたままだ。