絆~二十六話~
「未来は無事なん!?」
駆け寄ってきたさくらさんが真っ先に言う。
僕は、未来さんの眠った顔を見ながら頷く。
「はい。
霊が未来さんの感情を支配し・・・
殺そうとしていました」
息を呑むさくらさん。
龍羽くんが静かに呟く。
「霊は、自分の生前の感情に近いものに引き寄せられていく。
未来は・・・操られていることすら気づいてなかったんだろう」
「恐らく、そうでしょう。
原因は・・・自分の余命のこと、だと思います」
もっと注意すべきだった。
いや、言うべきではなかったんだ。
その時、すっと未来さんの目が開いた。
「ん・・・陵?」
少し、ぼーっとしたみたいだったが、
状況を思い出して僕たちから離れる。
「未来さん・・・」
「近づいちゃ、ダメ・・・!
やっぱり別れるべきだったんだよ・・・
どんなに好きでも、一緒にいたら絶対に苦しむ・・・!」
それは、僕に別れを告げている、と受け取ってもいいんでしょうか。
さくらさんが隣で悲痛な声で言う。
「あんた、なんでそこまで自分のこと大切にせんの・・・!?
いっつも、いっつも誰かの為やん・・・!」
「あたしなんか、どーなったっていいよ!
別れて、陵が幸せになれるなら・・・さくらちゃんたちが苦しまないなら、
それでいい・・・!」
・・・同じだ。
文化祭の時の、離れていた頃の僕の気持ちと同じだ。
傷つけてしまうなら、離れたほうがマシ。
痛いほど分かる。
「もうあたしのせいで傷つくのは見たくない!!
お願いだから・・・」
ほっといて。
そう力なく呟いた未来さんに。
肩を震わせてる未来さんに。
何て声を掛けていいのか分からなかった。
「・・・ふざけるな」
沈黙を破ったのは・・・龍羽くんだった。
声を荒げる龍羽くん。
「未来の想いはその程度だったのか!?
最後の願いは・・・死の淵で見つけ出した答えがそんなに軽いものなのか!?」
一度死に掛けて。
でも、答えと一緒に奇跡を起こしてくれた未来さん。
「違う・・・違うよ・・・
でも、あたしは・・・傍にいるべきじゃない」
虚ろな目。
近くにあった消火器を手に取った未来さん。
それを振り上げて・・・。
「未来さんダメです!!」
自分の頭に振り下ろしたー。