「直接会って謝りたい」。センバツ第8日の30日、3回戦に臨む日本航空石川(石川)の上田優弥左翼手(3年)は、昨秋の明治神宮大会で日大三(東京)の斉藤龍二捕手(3年)と本塁上で交錯し、けがをさせたため、罪悪感を抱きながら甲子園にやって来た。ネット上での批判は極力気にしないようにしてきたが、「申し訳ない」という気持ちは日に日に増すばかり。開会式前日にようやく直接謝ることができた上田選手は、30日の明徳義塾(高知)戦でも全力のプレーを見せるつもりだ。

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 ネット上には「故意だ」「これはひどい」などと次々に書き込まれた。昨年11月10日の神宮大会・日大三(東京)戦。九回の攻撃で二塁走者だった上田選手は、本塁へ駆け込む際に斉藤選手にぶつかってしまう。斉藤選手は全治2週間のけがをし、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やインターネット掲示板では上田選手のプレーを巡り議論が湧き起こった。

 日本航空石川の野球部員はそれまでスマートフォンの使用が認められており、家族との連絡や野球の情報収集に活用していた。ただ、中村隆監督(33)は書き込みを見た選手がショックを受けないようにと、神宮大会後すぐに「スマホ使用禁止」を言い渡した。

 チームメートも「故意じゃないのはよく分かっている」などと上田選手を励ましたが、もともと走塁に苦手意識を持っていた上田選手は「もう少し練習をしていればあんなことは起きなかった」と感じていた。それまで重視していなかった走塁練習に懸命に取り組みながら、直接謝るチャンスを待ち続けた。

 22日の開会式リハーサル。観客席で待機していると、探していた日大三のユニホームが視界に入り、顔を上げるとそれが斉藤選手だった。ネット上での批判を心苦しく思っていた斉藤選手が先に「あの時はごめん」と言い、上田選手もすぐに「ごめん」と答えた。けがが治っていたようで、よかった--。上田選手はやっと、胸のつかえが取れたような気がした。上田選手はこう力を込める。「あの時のようなことが起きないよう、細心の注意を払う」

 日大三は29日の三重(三重)戦で敗退。斉藤選手は試合後、神宮大会でのアクシデントについて「お互いが真剣に試合をしたから起きたこと」といい、「上田君には自分の分までいいプレーをしてほしい」とエールを送った。