マーケット情報発信に近い部署に戻るにあたり、少しずつ環境が整いつつあります。ここ2年ほどは他人のレポートを見るだけで、それに対してどうのこうのと思っているばかりでしたが、手元に情報端末が入ってあれこれデータが見れるようになってみると、外から文句を言うのは簡単だけど、自分で書くのは大変だよなあ、とあらためて思う次第です。


 データが整ってきたところで日経平均の予想をしますと、中期的な流れとしては4月上旬に天井をつけ、その後は波乱含みとなる見込み。もしかしたら高値を抜くことがあるかもしれませんが、主力どころはおおむね天井圏を形成するイメージです。その後、7月下旬に向けて軟調となる見込みで、そこで買えるかどうかがポイントと見ます。


その後は当面堅調になると予想します。米国NYダウは7月にサマーラリー、月末近くから8月にかけて軟調となり、11月の大統領選の織り込みがそこで終了する、ということかなと思っています。


 為替に関しては一貫して言っているように思いますが、日銀がマイナス金利を解除しても絶対水準としての利幅の動きは0.1%程度で、しかも継続的に利上げをする環境にはないと思われます。そのため、日銀の政策に注目というより、やはり米国の政策に注目するのが良いと思います。日銀の緩和解除観測での円高は、反転して当たり前だと思うので、そういう意味では足元の円安はそういうポジションの巻き戻しかなと思います。


一方、米国の利下げ期待はあまりに強すぎたので、それはそれでどうかなと思っていましたが、時間が経過してもなかなか景気が弱まらない、という状況がずるずると続いています。なので、過度な米国金融緩和期待がはげ落ちて、でもやっぱり緩和はするので、おおかた落ち着いた織り込みとなったところでじんわりと円高、ということでいいと思います。米国金融緩和でドル安、というより、行き過ぎた円安の修正、程度のイメージです。


 日本ではこの春の賃上げに関するニュースが引き続き出ていますが、高齢者、女性の労働参加がそろそろ一巡するころかと思います。要するに、労働人口がとっくにピークを迎えた後、女性や高齢者の就業で労働供給自体は増加してきましたが、それがいよいよ頭打ちになるということです。となれば、いよいよ人材不足ということになり、デフレ期待がインフレ期待に変われば、賃金上昇、物価上昇の流れにつながりやすいということかと思います。


にしても、日銀の植田総裁は本当にやり手だと思います。既報の通り、マイナス金利解除に加えて、イールドカーブコントロールの廃止、ETFの新規購入の停止も決定しました。これは歴史的な偉業と言えると思います。これ、普通だったら、イールドカーブコントロールの廃止だけ、あるいはETF購入停止だけ、でも、マーケットへのマイナスのインパクトは相当大きかったはずです。これらを、事前に少しずつにおわせ、そして賃上げが歴史的な高水準になるという高揚感の中でさくっと出してしまいました。そして市場への影響はほぼなし。日銀のこれらの政策の「しまい方」は、多くの投資家が心の中で抱いている株価の不安材料だったので、この何とも言えない、しかしそれでいて小さくはない不安が拭い去られたのは、突発的な一発材料、というものではないですが、後々じわじわ効いてくる出来事だったと思います