私が見ている限りの、先週の中小型株の決算発表後の値動きは、好決算でいったん上がってもその後下落、決算が悪ければそのまま下落、という動きでした。どうにもなりませんね。ただ、東京エレクトロン等が上昇して日経平均を引っ張り上げた動きが続いているわけですが、大型株中心に買われているのは米国市場も同じなので、こうした流れは世界共通と言っていいと思います。なので仕方がない面はあります。


 しかし、米国の細かい動きはわかりませんが、東証の先週木曜日の値動きを見ると、とうとう中小型株の保有に我慢できなくなった人が中小型株を売却して半導体等の大型株に乗り換えたかな、という感じの値動きに見えました。あるいは、新規のカラ売りと買いが入ったかもしれません。いずれにせよ、ずっと中小型株の下落と大型株の上昇を苦々しく見ていた投資家が、とうとう動いたかな、と。要するに、一番慎重な(あるいは下手くそな)投資家がとうとう動いたかな、と。あくまで個人的な肌感覚ですけれども。ということで、リズム的にはいったんそれぞれの動きは止まるのではないかな、と思います。


 米国は金融引き締めの効果を見極め中ですが、そもそも金利を引き上げたのはインフレ鎮静化のためで、過熱している景気を減速させるためです。言い方を変えると景気が悪化するのを見守っているところです。で、FRBの次の一手は金融緩和ということになるので、先読みをする株価は、今後は借入コストが低下する、というところを織り込みに行っているわけです。一方、日本の景気は米国景気の影響を受けるので、米国景気が減速するとなれば日本の景気もそういう圧力を受ける、となると、国内サービス業も、マクロレベルで考えれば減速する見込みとなります。となれば、国内サービス業の多い中小型株の株価パフォーマンスが落ちるのも無理はないというか、筋の通る話のように思います。


 これが一番メインのストーリーとなっていると思いますが、投資判断としては、ここに、日本のデフレ脱却、中国景気の低迷、円安、日銀の政策、といいったところが絡んでくるのだろうと思います。一つ言えるのは、先日のIMFの世界経済見通しで、日本の予想が絶対水準として低い上に下方修正された、というのは地味に痛い、ということです。IMFの予想はたいてい奇をてらったものではなく、コンセンサスに近いものなので、IMFがそう言ったからどうこう、ということではなく、世界の投資家は日本をそう見ている、ということだ思います。にもかかわらず、日本株は上昇をしています。


 株価が上がるということはその国の景気や企業業績の先行きを明るくみている、という風に思いがちですが、いわゆるバリュエーションの修正という要因もあります。もちろん、先行きが暗ければバリュエーションも下がるわけですが、明るい見通しに継続的な業績の向上(EPSの増加)が加わって、株価は継続的に上昇することとなります。個別銘柄の業績全体という点では究極的には名目GDPの増加がポイントとなりますが、それはいったんおいておいて、今の日経平均の上昇はPERの上昇が主要因で、中国株からの資金シフト、日本のインフレ率上昇によるバリュエーション見直し、というところがメインだろうと思います。したがって、流動性のある大型株に資金は入りますが、実は業績評価は二の次という相場において、いくら好業績でも中小型には資金が入りにくい、ということなのかなと思っています。


 しかし、市場全体のバリュエーションが上昇すれば、置いてきぼりになった銘柄が株価上昇する際の理由になります。個人的には中小型株は見守り系と思っていましたが、ここ数日の値動きを見ると、先々業績の拡大が見込まれる中小型株は買ってもいいタイミングだろうと思います。この先、FRBが実際に利下げに動いたあたりで、株価は動いてくるかなと思っています。