なんと、米国10年債利回りは4%を割りました。何ということでしょう。4.34.8%程度のボックス想定をしていましたが、想定よりも低下しました。直接的にはFOMCで利上げ停止から来年は利下げに移行する、という姿勢がはっきりしたことが大きいと思いますが、足元の米国のインフレの要因は家賃の比率が高く、先行指標と言える住宅指標は大きく下落していることから、来年の米国のインフレ率は大きく落ち着いてくるだろう、という見方がもはやコンセンサスと言えるレベルになってしまっているのはあると思います。

 そうはいっても、水準としてのインフレ率は高いので、理屈から言えば今の金利はもっと高くていいはず、という風に見ていたのですが、10年債利回りと言えば満期まで10年の債券ということですから、そこまで持つなら全然オッケー、ということなのですね。私はもちろんそう思うのですが、短期志向のマーケットはそうはいっても今のインフレ率の水準でこの金利は容認できないだろう、と思っていたわけです。


 しかし、調査部を離れてからの私の予想の外し方としては、思ったより市場の考えは浅かった、というパターンがあるので、そういうパターンからすると、足元で市場はインフレ率の低下を楽観的に見すぎている、ということかもしれません。


しかし、時間が経過すればインフレ率は低下し、現在の金利水準のまま推移したとしても、結果的に足元の物価水準と比較しても妥当、という時期は遠からず来てしまいます。となれば、理屈はどうか知らんが結果的に安めの金利予想が正解だった、ということになります。


 日本株については、米金利低下で円高となり、NYダウが高値を更新している一方で日経平均は高値を抜けずにいます。以前当欄では、米株が上がる一方で日本株が上がらないのは、日本株がいずれ上がるというより日本株が弱い、と書きましたが、そういう局面はそろそろ終了したのではないかと見ています。私の手持ちの銘柄も含め、内需系小型株が異常に弱くなっていますが、改めて決算を見たところ、さほど悪いものではありませんでした。まあ、売上増加に対して利益率がついていけてないケースもありますが、強気の目線で見れば大きな問題には見えません(少なくとも私には)。慢性的に利益が出ない体質となっているならともかく、そうは思えないからです。日本株(あるいは日本経済)に弱気となれば、とても持っていられないという気持ちはわからなくもありません。しかし、外国人はまだそこまできっちり日本株を調べて買っているわけではないと思うので、そもそも日本の小型株を売るほど持っている外国人がたくさんいるとも思えません。


 日本株が上に抜き切れない理由は、円高によるデフレ再燃懸念をベースとして、政治面での懸念も効いているように思います。パーティー券問題からアベノミクスの終焉か、というような論調をちらりと見かけましたが、海外でそうしたストーリーが出回っている可能性があります。しかし財政出動は既定路線でしょう。また、日銀の緩和終了観測も大きな懸念材料になっていると思いますが、それは日本のデフレ状態の根深さととそこからの脱却に必死な状況が分かっていないためと思います。個人的には、日銀がデフレ脱却機運を殺すような政策を打つとは到底思えません。


 また、岸田政権の来年の財政出動も、減税についてエコノミストからは効果が薄いという声が多く、こうしたことも日本株のネガティブキャンペーンとなっている可能性があります。しかし、これらは財政再建派を中心としてないものねだりで注文を付けているような話にすぎず、財政出動効果は(たしかに減税よりもいい策はあるかもしれないものの)確実に景気にプラスに作用する話だと思います。実際に景気回復が加速し、企業業績が改善してくれば今度はそれを好材料視するのは目に見えています。もし来年減税の効果がちらりとでも見えれば、最近の米国での減税効果を見ている投資家としては無視できないはず。小型株の逆張りは底打ちしてから買っても間に合う、というのがセオリーだとは思いますが、今下がっている小型株も含めて、日本株の先行きは明るいと見ています。ここから日経平均が戻り高値を更新したら、マスコミ等はそろって、出遅れ、割安日本株に海外投資家が注目、と書くに違いないと思っています。