円安が続いています。1ドル140円どころを突破してからするすると円安になっています。あえて言えば昨年は145円前後で少しもみ合いましたので、このあたりでいったん横ばいになるかもしれません。昨年だけ見ると、円安に進むタイミングが今年とよく似ていますので、春から夏過ぎにかけて円安に進む季節要因があるのでしょうか。


個人的には、昨年は仕事で10月に米国に行ったのですが、ホテル代やら交通費やらの精算をする時期がまさにドル円の天井で、為替手数料もあって、精算した時の為替レートは1ドル152円とかでした。今年も9月に行くのですが、150円台を見そうな感じです。経費的には一方的に損ですね。


 さて、木曜日のフィナンシャルタイムズで日本株が上がっているという記事がありましたが、執筆者の記者の一人は東京にいる人のようなので、その人の能力は存じませんけれども、純粋に海外から日本を見て考えたこと、ということでもなさそうです。そこは少し割り引くとして、日本株が上昇している要因の一つに円安があって、海外投資家の中には、今回の世界的インフレで日銀も緩和姿勢を改めざるを得ない、よって円安は進まないと見る向きが結構いたものの、ここにきてどうやら植田総裁はどこまでも緩和政策を継続するようだ、という風に見方が変わった、ということが紹介されていました。円安が加速したのは昨日おとといの話でもないので、こうした見方の変化もここ数日に一気に進んだという話でもないと思います。


 しかし、日本人で日銀が政策を変えると予想した人はどれくらいいるでしょうね。おそらく多くの人は政策変更はないと思っていた(というか、たかをくくっていた)のではないでしょうか。おそらくその理由の半分以上は、日本人であるがゆえにまだまだデフレマインドにとらわれているから、というのはあると思います。要するに、足もとのインフレは事実として認めるけれども、これが定着するというのはまだまだ懐疑的な人が多いのではないか、ということです。恐るべしデフレマインド。海外投資家、あるいは研究者は、このあまりにも粘着的なマインドには本当に気を付けた方がいいと思います。というか、現在の心ある日銀幹部は、その怖さがよくわかっていればこそ、執拗な緩和策を継続しているのだろうと思います。


 心ある日銀幹部、といえば、証券アナリストジャーナルの先月号(6月号)に、またまた元日銀の沼波さんが寄稿していましたね。「日本銀行の「失われた10年」忘れ去られた説明責任と失墜した信頼」という題名です。もうずっと黒田総裁の政策を批判し続けている人ですが、こちらの文章でも全くぶれていません。書いている理屈としては経済学的には正論のように思えますが、正論をぶってリーマンショック後の日本経済をぼろぼろにしたのが白川総裁だと私は思っているので、正論って何?とすら思いますね。もし白川総裁をはじめとした旧日銀村の思想でその後の金融政策が続けられていたとしたら、今回のコロナあたりでもう本当に立ち直れないくらい日本経済はボロボロになっていたと思います。そうならなくて本当によかった。そういう意味で、沼波さんの主張も、昔はまだそういう人がいるか、という感じ、うっかりするとその時代に戻りかねない、という危惧はあったのですが(現実的には黒田総裁は盤石に思えたので、こうした器具が現実化する恐れはまずないとは思っていましたが)、今となっては、沼波さんのような発想は昔話、と考えていいように思います。黒田日銀の批判をするなら、まず自分たちが何を間違えたのか、間違えないために今後どうするかを考えるべきですが、そもそも彼らには自分たちが間違えたという発想は全くないので、そういう日は永遠に来ないのだろうと思います。