NYダウは13日に前日比1276ドル安と急落しました。経験則で言えば、というか、すぐれたデイトレーダーのリスク管理術としてなるほどなと思った法則によれば、急落時にはいったんポジション解消、というのがあって、そういう意味では短期で売買している人はいったんポジションを縮小あるいは手じまうところであろうと思います。米株については。


 NYダウの日足チャートでは、依然としてトレンドは弱いままと見ていいと思うので、回復するのはまだ先と見るのがセオリーだろうと思います。30,000ドルを割り、今年6月の水準も下回れば、買い戻しや新規の買いも見込まれると思いますが、逆に投げ売りも出ると思います。当欄で何度か書いているように、コロナ後安値からの戻しの半値押しまでは見た方がいいと見ているので、ニューヨークダウは28,000ドル前後まで下がると見ています。したがって、メインシナリオとしては、30,000ドルを一気に割り込むか、いったん粘ると見せて割り込むか、いずれにしても割り込むだろうと見ています。


 割と著名と思われる海外のエコノミスト(?)が、米国株は割高である、なぜならインフレ率が高いので、増益率が一桁だと、インフレ調整後の実質成長率ではトントンかマイナスだから、ということを言っていました。しかし、その見方は間違えていると思います。米株についてはちゃんと検証していませんが、日本株については株価が連動するのは実質GDPではなく名目GDPです。インフレであろうと何であろうと、利益が伸び、かつ、PERが一定であれば、株価は上昇するのです。この理屈、株価が名目値に連動する、という理屈は米国でも同じはずです。あるとすれば、利益が増えてもインフレ率が高すぎて、来期以降減益になると見込まれる場合(原材料費の上昇でコストが上昇する一方で販売が伸びない、というような状況)、予想PERの低下によって株価が上がらないケースです。それならまだわかる。


 なので、その指摘のどこが違うかというと、実質利益成長(インフレ考慮後の増益率がマイナスの場合)、株価が上がらないのではなく、株価は上がってもインフレ率に負ける、というのが正解だと思います。例えば、企業業績が5%増益、インフレ率が7%の場合、5%の増益率で株価は5%上昇するがインフレ率が7%あるので、株を持っていると実質的には2%負ける、ということです。決して、名目の株価が2%下がるということではない。


 ということで、マクロ的には、米国では貯蓄は取り崩されつつありますが、まだ家計に余裕はありそう。要するに需要超過なので、Fedは金融引き締めをして需要を抑えないといけません。現状のように実質金利がマイナスなんてもってのほかです。少なくともあと1.5%程度は利上げしないと土俵にも乗れない感じではないでしょうか。米国10年債利回りも3.5%は超えるはずで、4%程度にはなると思います。その時には株価は底を打っているだろうと見ています。景況感、物価等は引き続き注意深く見る必要はあると思いますが、景気については大崩れはないと現時点では楽観的に見ています。


 そうした中で、日本はインフレ率が抑えられていることもあり、また、コロナの行動制限解除の恩恵がこれから出てきますので、全体感としては不安が少ないと思います。先週東急のことを書きましたが、普通はインバウンド解禁のニュースが出てから買うのでは遅すぎるのですが、コロナ系の材料は疑心暗鬼がひどいのか、実際に売り上げ等が動き始めてから株価が動くようなことがあるように思います。したがって、観光客が増えてながら株価が上がる、というようなことはあるのではないかと見ています。