FOMCでは市場予想取りの0.75%の利上げとなりました。ある程度織り込まれていたので、個人的にはこの際1%利上げしてしまってもよかったように思いますけれども。一方、金利水準という意味ではまだまだ実質金利はマイナスですので、景気に与える影響という点ではまだまだ拡張的と言っていいと思います。もっとも、市場参加者は絶対水準もさることながら、方向性を見て動くので、緩和策から引き締め策へ、ということですでに景気減速、あるいは後退を読んでいます。また、実際に米国のGDP2四半期連続でマイナス成長となり、いわゆる景気後退局面入りということになりますが、いやいやそうじゃない、という議論も出ています。


 経済成長は結局のところ前年比や前期比の伸び率であらわされるので、実質金利がマイナスだろうが何だろうが、大きく伸びた後の足踏みが出て、その足踏みが大きくなれば景気後退ということにもなりえます。長短金利差でみるいわゆる逆イールドの話も、GDPの景気後退局面入りがどうかという議論と似ていて、逆イールドになると景気後退になるなどというのも本末転倒はなはだしい話だと個人的には思っています。なんというか、景気減速に伴って出てくる現象であって、その現象が景気後退を呼ぶものではないのです。GDPの話も同じで、こんなのは誰かの定義に過ぎないので、2期連続マイナス成長なら景気後退局面、という定義であれば、それはそれ以上でも以下でもなくその通りということでいいじゃん、と思います。


 それはともかく、米国の足元の景気のポイントは雇用が堅調、ということにつきます。普通の景気循環だと、在庫が過多になって生産が落ち、生産が落ちる(落とす)過程で雇用が余り、失業者が増えて求人数が減る、そして消費が落ちる、というルートをたどります。そういう点で、今回は雇用は堅調ですので所得は落ちず、したがって消費も落ちない、という流れとなっているわけですが、今回は所得は落ちない一方で物価が上がっているので、実質ベースで見てみれば結局所得は落ちている、ということになります。なので、雇用はキープされつつも所得は実質的に減少、消費は実質的に減速方向、ということになるのだろうと思います。


 マクロの統計的には高齢者が早期退職でたくさんやめてしまった、ということになっていますが、実際米国の金融の業界紙を見ていても、ベテラン勢の退職により人手不足が、という記事を見ます。米国ではGDP7割上は個人消費なので、所得が物価以上に上がってこないと、景気は強くなりません。そういう意味では、物価の上昇が止まらないと厳しい、ということになりますが、原油価格もピークアウトしていますし、ここから1年先まで見るならば、物価はある程度落ち着いてくるとみられます。となれば、景気もそうそうそうひどいことにはならないでしょう。


 となれば、当欄で3,000円割れを期待すると書いていたリクルートが、そこまで下がらずにむしろ上昇してしまったのもうなづけます。なんせ米国の雇用は堅調なわけですから、業界環境はいいわけです。


 米国では金利上昇で成長株が軒並みやられた印象ですが、長期金利は天井をつけてむしろ下落気味の動きとなっています。NYダウは底打ちした可能性が高いと書きましたが、そうした見方は変わりません。金利上昇で成長株が割を食いましたが、日本の中小型成長株もここからは買っていいと思います。って、安値から見たらすでにかなり戻しているものが多いと思いますが。


 先行き不透明感が強いのでまだまだ本格的上昇には慎重な見方を崩さない、みたいなことを書くプロがいますが、個人的にはほんとうにやめとけ、と思いますよね。先行き不透明感なく強気に思えるときは株価は天井ですから。不透明感があるから上がるといっても過言ではありません。そういうことを書いてる連中が強気になるまでは安心して買える、くらいに思います。