本日のお題は、円安について、ロシアのウクライナ侵攻について、日本株の見通しについて、です。


 まず、円安について。悪い円安、という言葉にマスコミは大喜びしているように見えます。そもそも急激に進んだ円安に対して、悪い円安という表現を使う人がいたかもしれませんが、415日の閣議後の記者会見で、鈴木財務大臣が「悪い円安」という言葉を発するともう鬼の首を取ったかのようなはしゃぎぶりです。下品極まりないですね。広く言われている通り、足元の円安は、欧米が利上げ等、金融引き締めに動こうとする中で、日本が緩和を継続する強い意志を示していることが直接的な原因ということでいいと思います。結果として日米金利差が拡大して、というルートからの説明もできるとは思いますが、根は同じことです。また、日本の物価上昇率が欧米と比べて低い、ということも、話の筋としては似たようなものです。為替に影響を与える要因は様々だとは思いますが、金融政策の違いは大きなインパクトを持ち得るだろうと思います。


 内外金融政策の違いが為替に顕著な影響を与えた例として、リーマンショック後の超円高があげられます。当時は今回とは全く逆で、欧米中銀が世界金融危機に際して流動性を確保すべく大胆な金融緩和を行った一方で、当時の日銀は銀行の不良債権問題に一応のめどが立ち、日本の金融機関は健全であって金融緩和をする必要はない、という立ち位置でした。その結果、緩和的な欧米に対して距離を置く日本、ということで円が買われてドル円は70円台、鉱工業生産も、そもそも金融危機は米国で起こったはずなのに日本の方が落ち込みが大きかった、というアホみたいなことになったわけです。で、そこに出てきたのがアベノミクスで、政府による大型財政出動と日銀による大胆な緩和策で円安転換、株高、となったわけです。


 ということですので、当面、日本の円安は進みこそすれ、円高に転換する可能性は低いと見ていいと思います、短期的には、5月のFOMCで利上げが決定され、そこでひとまず材料出尽くしで短期的に円高に反転する可能性はあるように思いますが、そのまま円高に進むとは思えません。


 ということで、この先のポイントとしては米国の景気減速と日本の物価上昇率となるでしょう。日銀の物価目標が2%程度ですが、2%になった瞬間緩和をやめるとは思えませんので(日銀は安定的に2%水準が定着することを目標としており、瞬間風速で2%に乗ったから目標達成、緩和終わり、とはならない)、日本の緩和継続は今のところほぼ間違いないと思います。


一方米国ですが、景気が減速してくれば需要が落ち、結果的に物価上昇圧力も低下しますが、現状はまだそのレベルに達しているとは思えません。なるとしても、もう少し金利を上げないと、今の水準では物価上昇率に対して金利が低すぎるのです。なので、金利水準がもう少し上がらないと、で、上がったうえで打ち止め感が見えてこないと、円高への反転は見込めないだろうと思います。


 次にロシア情勢ですが、当欄35日号で、ソ連勢力が実効支配しているモルドバのトランスニストリア地域への侵攻もありうると指摘しましたが、ここにきてロシア軍幹部が、モルドバにも介入する考えがあると示したとのこと。ウクライナの南部回廊をモルドバまで伸ばすとなると、ウクライナ南部の港湾都市オデッサを攻略する必要があります。ここはそう簡単にはいかないというのが専門家の見立てであり、もしロシア軍が本当にモルドバを目指すとなると、戦争は一層の熾烈さを増すこととなりそうです。また、モルドバはウクライナとはまた別の国ですので、ウクライナのみならずモルドバまで、となると、ロシアの狙いは領土拡張、ととらえられかねず(というかそういうことになる)、市場での織り込みは進んでいるとはいえ、ちょっと重たい材料となる可能性があります。また、なんといっても、ロシアから地続きにトランスエストニアまで制圧するとなると、ウクライナはアゾフ海、黒海への出口を完全にふさがれることになりますので、ウクライナの海路からの資源、エネルギーの輸出に影響が出ることは間違いありません。


 ということで、米国の最初の利上げ前後は株価が調整することが多い点、また、基本的に5月は「セルインメイ」ということわざのある弱い月である点、そしてロシア情勢を考えると、当面は日本株も弱含む可能性が高いと考えざるを得ません。ここからは決算発表も始まりますし、5月末を買い出動のタイミングと見て、今しばらくは銘柄研究に集中するのがよさそうに思います。