マーケットの関心は米国の金融引き締めやインフレからウクライナ情勢に移っているようにも見えますが、やはり根底には米国金融引き締め問題が大きく横たわっているように思います。というか、正確には米国金融引き締めによる米国景気への影響と高PER銘柄のバリュエーション低下(要するに株価下落)への不安ですね。


 米国の消費者物価指数のグラフを見ると、過去数十年以来の高い水準となっています。エネルギー価格の上昇に加え、半導体や労働力の不足によるモノ、サービス(要するに供給)不足が影響しています。そこに、コロナ後の強い需要が重なっているというわけですが、この状況はまだ解消されていません。もっとも、海運運賃は低下してきていますし、半導体不足も解消されつつあり、自動車生産は改善、米国での新車、中古車価格はピークを打ったように見えます。前年比効果という点では米国の物価指標は4‐6月期にも一巡して落ち着きを取り戻すと予想されますが、それでもある程度高い水準をキープしそうに思います。


 高い物価の理由を上記のような需給面から説明するのが主流と思いますが、違う面からみると巨額の財政支出と未曽有の金融緩和が背景にあったとの見方もできます。市場関係者の発言等を見ている限りこの点に関する論調はあまり見られないように思いますが、それはすでにやってしまったことで今さら言っても仕方がないからか、あるいは財政出動はマーケットが好感する案件だけに、今さら否定しにくいという背景があるのかはわかりません。


 ウクライナ問題も日本の報道は西側のものばかりなので、NATOの言い分ばかり前面に出ているように思います。個人的には支持率が低下しているバイデンの発言がどこまで信用できるのか、という風に思うとともに、プーチンは相当やり手だと思うので、ヨーロッパともども一枚岩になっていないとロシアの思う形でことが進むのだろうと思います。この件は予想ができないので、事前に相場を張ることはできません。したがって、機関投資家の多くはマーケットニュートラルのポジションに傾けざるを得ないだろうと思います。売れる人は現金比率をある程度高め、そうでない人はベンチマーク並みにするということです。そうでないと、紛争が起きなかったときに株価が大幅に上昇する可能性があり、その時についていけなくなるためです。


 金融引き締めは格好のバリュエーション修正の理由になりますが、そうでなくても米国株のPERはまだ高いので、うまくしてもこのまま半年程度は横ばい(その間に予想利益が増加すればPERは低下する)、そうでなければここから何割か下落するリスクは依然として高いと見ています。日本株は相対的に割安ですが、米国株が大きく下がれば、その下落に巻き込まれる可能性はあります。とりあえず日経平均は三角持ち合いを割ったところにいますので、一昨年安値から昨年高値の0.382押し水準である25,280円まではあってもおかしくない、と思いつつ、しかしこの価格帯はあったとしても一瞬ですぐに切り返すだろうと見ているので、基本的には買いのスタンスでいいだろうと見ています。