WEEKLY MAIL 第1033号(平成27年11月28日) 発行 NO.2

 
26日に開かれた官民対話で、榊原経団連会長は昨年を上回る賃上げを期待する、と踏み込みました。また、設備投資も3年後には80兆を越える、と。ただし、法人実効税率引き下げなどの条件がそろえば、という注文を付けました。それに対し安倍首相は早速実効税率20%台への道筋をつけると回答しましたが、今朝(28日)の日経報道によると、来年度に20%台 まで下げるべく検討に入ったとのこと。これはいいですね。大手企業は賃上げをせざるを得ないでしょう。というかですね、政府や日銀が言うとおり、企業部門 は過去最高益更新、キャッシュは過去最高に積み上がる中、設備投資や賃上げをしなさすぎです。景気の先行きが不透明云々言いますが、透明な未来なんてある わけありません。自分の経営能力のなさを外部環境のせいにするな、という話です。投資先が見つけられないようなら配当等で株主に還元してしまえばいい話 で、それもせずに内部留保をため込むばかりとはどういう神経をしているのでしょうか。株主も世間も、そんな状態を許してはいけないと思います。

  ということで、そういう声も徐々に広がることを期待する一方、エネルギーを除いた物価がそれなりに上昇する状態が定着しつつある中、いつまでも賃上げや設 備投資を渋る姿勢が通用しなくなるのも時間の問題だろうと思います。日銀の黒田総裁は、デフレ脱却に少しでも早く気付き、他社より先に投資を開始した会社 が勝者となる、ということをしきりに言っていますが、まさにその通りだろうと思います。経団連会長は上記会議で提出した資料に「収益が拡大した企業に対 し、今年を上回る賃金引上げを期待」と書きました。見方によっては、収益が拡大しなかった企業は今年を上回る賃上げをしなくてよいと読めますが、逆に言え ば、今年を上回る賃上げができないような企業はダメでしょ、とも見えます。失業率の低下を背景に、後者の見方が広がるといいなと思います。賃上げに渋い会 社に対し、世間が、ああ、あの会社は賃上げできないんだ、やばいよねー、という風になればいい。あくまで一般論ですが。

  デフレ脱却が、企業収益拡大→雇用環境改善→消費拡大→企業収益拡大、というサイクルのどこからスタートするかは難しいところです。しかし、実際に企業収 益の拡大はすでに達成されている以上、次は賃上げをするべきというのは当然の流れです。通常はインフレ率プラスアルファの賃上げ率が常識で、そういう意味 で日本の消費者物価指数は依然として低いのですが、デフレ脱却の入り口に立っている以上、最初はそこを乗り越えていかないといけません。そういう重要な節 目にいよいよやってきたということだと思います。 賃上げ水準にあれこれ言うとは政府は過剰介入だと言う意見はありますが、バカ言うな、といいたいです ね。こんなもの、ある程度政策が介入しないと解決しようがない話です。日銀の量的緩和と財政支出が功を奏し始めたところです、それでも民間が自ら動かない のなら国が動くよう促すしかないじゃないですか。そしてこの流れは、日本の成長率を大きく高めていくと思います。しかし、どうやらそのことに外国人投資家 を含め、多くの人がまだ気づいていないようです。27日 は前日の米国が感謝祭で休みだったこともあり、日経平均は上昇せずに終わりました。日本の投資家は何をしているんだろうと思います。こんないい話が出てい るの買いで反応しないとは、どうかしてるのではないかと思います。そうでなければどうかしているのは私の方でしょうか。

 もちろん、実際の賃上げの水準がどうなるのかはわかりませんが、めちゃくちゃ期待しないまでも、悪くはならないだろうと思います。そうなれば来年の国内景気はかなり良くなると思います。個人的には、これで日経平均22,000円 までは固いな、とみています。また海外投資家においしいところを持っていかれるのでしょうか。まあでも別にそれはかまいません。投資の世界は厳しいもので す。仕事上、思うところはなくはないですが、一投資家としては、他人はともかく自分が儲かればそれでいいわけですから。