意識はあるのに | クラブ職人の徒然草~2

意識はあるのに

僕は47歳になる年に長柄の師匠にお仕掛け弟子入りさせて頂き、


それまではネットだけでオーダーメイドを請ける形で営業していましたが


ゴルフクラブを扱うプロとしての知識と技術を学び、師匠店の現場で教えていただきながら経験を積めました。


業界でも有名な高い技術体系を直接学べたお陰様で今のゴルフピットがあります。


単に組み立て技術だけでなく、結果としてクラブを作りあげる為の道具、計測器、それらの使い方と出た数字の評価方法が根本にあるところから学べた事がとても重要です。


納品するゴルフクラブは謂わば果実。

その1個の実をならせるためにしっかりした木が根を張り十分な知識と技術という養分を結集させて生み出されるものです。


ゴルフクラブ作りは最初にゴールを決めます。

最初に設計図があるからこそ物が作れる訳です。


スプーンのヘッドにシャフトを付けたからスプーンに仕上がる訳ではありません。


先ず使用者がありき。

そのプレーヤーが使うスプーンのロフトは?

立ち気味の14度なのか、レギュラーの15度なのか、寝気味の16度に仕上げるのか。

その時フェイス角はどうなっているのか。


14度に仕上げたけどフェイス角が5.0度オープンでした、ではつかまらないクラブになってしまうでしょうし、16度まで寝かせたけどフェイス角が2.0度クローズドでした、では高いチーピン球しか出ないでしょう。


ロフト角は寝かせたいがフェイス角はオープンにしたい、は物理的に無理です。


その理屈を理解した上で、これから組み立てようとするヘッドを正確に計測し、フェイス何度オープン(またはクローズド)でロフト何度に仕上げられるのか、の評価を正確に計算出来なければ、そのお客様に見合ったクラブに仕立てて納品出来るかは分からない事になります。


シャフトを何度、どちらに振って付ければフェイス角が何度でロフトが何度のクラブになる、そのためにはネック孔の加工がどのくらい必要か。


いくら加工をしてもフェイス角はこれ以上開かない(または閉じない)、だからロフトは何度までしか立てられない(または寝かせられない)、という評価が出来ないのに何を根拠にそのヘッドを使ってその方にクラブを作ってお代金を頂けるんでしょう?


シャフトの話にしても、その方が使うスプーンならシャフトの重さ、硬度はこのくらいが適切範囲。では今から使おうとしているそのシャフトはそれに見合っているのか。

それはやはり正確に硬度を測れる計測器が無ければ判断はつかない筈です。


ヘッドのスペックを正確に測る計測器、シャフトの硬度を正確に測る計測器、これらはゴルフクラブ専用の計測器なので種類も少なく、そしてプロ工房として使い物になるレベルの物は高価です。


各工房のご店主達は皆さん、お客様に対して高い意識を持っておられるのを僕はよく知っています。

ただ、残念な事に知識と設備投資のお金がない。


ゴルフフェアの会場で沢山の工房主様達と話をしていて感じる事です。


僕たちの仕事はモノを右から左に流して大きな利鞘を稼ぐ事は出来ません。

ラグビーみたいなもので手に持って身体を使って一所懸命走った分しかゲイン出来ません。

自ずと稼げる金額は天が知れてるのでお金無いんですよ。


でも、正しい知識を持てば何が絶対に必要か、その為にはどれだけの資金が必要か、が分かってきます。


それを分かっていながら設備せずに、設備の無い範囲でしか仕事をしないのはお客様に対して不誠実です。


ゴルフクラブは道具。良い道具は良い道具とそれらを駆使できる技術が無ければ生み出せません。


67歳のロートルクラフトマンから、この道を目指す若者達にせめてもの助言になれば幸いです。


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