それでは、アメリカはどうなっているのでしょう?
アメリカの制度の日本との最大の違いは競争原理がこの業界にもあたり前のように導入されていて、医局制度もありません。たとえばどこそこの大学を卒業したからといって、そのあとその大学の卒業生としてOB組織はありませんし、そのことが人事に影響するということはあまりありません。本人の能力と周囲の評価ですべて決定されます。医学生は卒業後米国が決めた国の制度にのっとりマッチングした病院でインターンを行い、レジデンシーを行い、その後自分が専門医となりたい専門分野のフェローシップを行う必要があります。これらの研修を行える病院は国内で統一されたプログラムを充分に行い得るかをかなり厳密に審査され、ごく限られて施設のみがその指定を受けることができます。いったん指定を受ければその病院には医師一人育成当たり何万ドルといった育成費用が国なら分配され、それをもとにスタッフを雇い、十分な育成を行うのです。
たとえば脊椎専門医になろうと思えば、全米に10数か所しかない認定施設で最低2か所で2年間トレーニングを受けなければなりません。それぞれの病院の受け入れられるフェローの数は限定されていますから、全米から、またインドや中国、韓国、南米など全世界から集まる優秀なレジデントやフェローたちとの壮絶な競争があります。この競争に勝ち抜くために、全員が臨床医療に関して驚くほど勉強し、また努力します。そうして晴れて専門医になれば統一された高水準の教育制度を受けているわけですから、能力や知識は偏りが少なく、患者さんが安心できる医師が養成されるわけです。こうした激戦を勝ち抜いた彼らには富と栄誉が与えられ、彼らは年に何億も稼ぐことになります。
一方で、アメリカの制度のマイナス点は日本がかなり早いうちから指導医のもと術者として手術を行えるのに対して、アメリカでは助手は助手です。フェローやレジデントの間に自分自身で外来を行うことはないですから、自分の患者さんというのはいません。ですから、指導医の外来に来た患者は指導医が手術しますので(手術に対して執刀医が報酬をもらう制度ですから、フェローにやらせれば患者との契約違反ということになります。)、術者として手術ができるのが、結構後になるということ、それから、日本のように専門医同士が手術に入りあうこともあまりないので、フェローシップを終えたばかりの医師が執刀する時には正直どうかなと思うことがあります。
このように日米で医師育成制度は大きくことなります。ヨーロッパでもアメリカに近いところが多いようです。