AIS(思春期特発性側弯症)をレントゲン結果からカーブの大きさや脊椎の中での部位、側弯の硬さなどで細かく分類し、それぞれの手術成績を蓄積することで、それぞれのカーブのタイプに応じた固定範囲を明らかにする分類がLenke分類です。これは以前にDr. Kingによって作られたKing分類を基本にしてさらに手術成績や、手術しない場合の経過、カーブの硬さなどを蓄積してDr.Lenkeによって考案された分類です。
この分類はAISの病気の把握のために大変優れた分類です。なかでも27種類に分類されるこの分類を用いれば、手術の場合どの脊椎からどの脊椎まで固定すればよいか知ることができるためです。
AISの治療では、手術の手技に習熟していることは大事なことですが、同じくらいに、または時にはそれ以上に、どこからどこまで手術すればよいかを判断することは大事なことです。
逆にいえば、どんなに上手でも固定範囲を間違えていれば、術後早期に、あるいは長期的に患者さんは背中にトラブルを抱えることになります。Lenke分類は適切な固定範囲を決定しうる分類として、とても重要な分類です。一方で1つの懸念がありまして、この分類がどのような結果をもとに作られたか、どのような歴史の上に作られているのか、その弱みはどこにあるのかを知らず、盲目的にこの分類を使えば、間違いのもとになりえますし、また、思考停止となり、カーブのどこからどこまで固定すればよいうか、そのための要素は何か、ということを軽んじうる結果となる恐れがあります。
つまりどんなに優れた制度や分類も、運用する側がきちっとしていなければ、それを生かすことはできないということです。Lenke分類は大変優れていますが、これはガイドラインにすぎないということです。これのみにとらわれることは先ほども述べましたように、思考停止をもたらしますし、よりよい分類、治療への足がかりを奪ってしまうことになります。もちろん現状でものすごくたくさんのことがAISのカーブの経過についてわかっているとはいえ、まだ十分ではありません。Lenke分類に加えて、レントゲンだけでなく、実際の患者さんの問題(肋骨の隆起や肩のバランスなど、この分類には含まれない要素)を加味して、さらに、多くの先人たちの論文になっている結果を加味して、それでもいつでも完璧な回答が出てくるわけではありません。人間は生き物ですし、医者も生きものなのです。コンピュータ同士ではありませんし、また、まだ十分な判断のための要素が揃っているわけではありません。ですから我々外科医は毎日必死に勉強し、また世界の外科医たちが正しく判断できうるために、その判断材料を提供するために研究し、論文を書くのです。たくさんの論文を読み、多くの専門家と話し、知識を蓄積することは、たくさんの患者さんを手術し、たくさんの失敗をすることを未然に防ぐ、大変貴重なことだと思います。これを怠れば、最良の外科医にはなれないだろうと思いますし、後を継ぐ人々に何ものこいていけず、医療を停滞させることになるでしょう。
ペンとメス両方が優れた外科医であるためには必要だと私は思います。
おそらくこの考え方は多くの分野において一般化できることだと思います。


$側弯症とたたかう