今日は真面目な話です。
成人の脊柱変形についてです。
いつもはおもに子どもの脊柱変形についての話が多いのでが、当然成人後にも脊柱変形は問題となる場合があります。いわゆる脊椎が左右にまがる側弯症だけでなく、体が前に倒れてきたり、背中が全体にまあるく曲がって来ることがあります。
このなかで、昔よく日本の農村などで見た背中が全体に曲がっている御婦人は多くの場合骨そしょう症のため、複数の脊椎が骨折を起こし、全体として変形してきているものです。年齢も多くの場合高齢で、曲がっていること自体が問題になることはあまり多くありません。また、体力的にも手術でこれを矯正するのはかなり身体にも負担となります。
ところがどでうしょう?もし40-50歳台の健康な方が脊椎が変形して、いて同じような姿勢であったら。外見もとても本人の負担になりますし、機能的にも歩くことや、走ることに関してとても不自由ですよね。
ある研究結果(Dr.Glassmanの論文)によると成人の側弯症等の脊柱変形の疾患の方で、手術を行った場合に何がその成績に最も影響を与えるか?
1.側弯の術後の大きさ
2.手術時間
3.術前の症状の重さ
4.年齢
5.側年から見たときの体のバランス

答えは5.の側面から見た身体のバランスです。
つまり手術をしてどんなに側弯の角度が小さくなっても、重心が前に行ってしまっていれば、腰痛や歩行のしづらさのために成績は悪くなってしまうということです。
つまりそれだけ、身体の重心が頭の真下にあることが重要ということです。
ただ、みなさんの高齢の方で、背骨がまあるく変形している方をよく見かけますよね。
ですが一方で、Dr.Gelbの報告によれば、高齢者でも、背中の症状のない方たちのバランスはけして悪くなく、差異はありますが、概して頭のました前後3センチ以内に入っているということがわかりました。
一方で、年齢とともに腰椎は美しい前弯があったのが椎間板が痛み、変性しまっすぐになっていき、その結果若者と比べると明らかではないけれど少し前にバランスが悪くなるということです。
ですから、高齢の方であるからといってもなるべくバランスは良くするように手術は考えたほうがよさそうですね。
身体のバランスを手術で変えるというのはとても大それたことですが、そのことでお困りであれば、それをよくするのが外科医の仕事ですからね。最大限成功の確率がよくなるように、手術の技量、知識、見識ともに深めていかなくてはならないなと思っています。
マニアックな話でしたね。
次回は軽い話題を。