先日再会したフィギュアスケートオリンピックのメダリスト&世界選手権優勝2回のチャンピオン曰く。



「自分は怠け者なので、出来るだけ簡単にスケートをしたい」、「出来るだけ力を使わず、無駄な練習はせず、怪我しないで、疲れない様に楽しみながらスケートしたい」
何と都合のいいことを言うのか?と思いましたが、次の様な内容でした。

 ジャンプを例にすると、みんな上半身の回転や腕を締める力を使って跳ぼうとするが、究極上半身を使わなくてもジャンプは跳べるとチャンピオン。上半身を使わなければ、無駄に力むこともなくジャンプの成功確率は上がる。この観点から自然と柔らかな腕の締め方や上半身の使い方が見えてくる。力を使う昔のスケートスタイルでは現在の高度なジャンプは跳べない、という。

 またジャンプしたら着地しなくてはならず、高得点を狙うには続けてジャンプを跳ぶコンビネーションジャンプにしなくてはならない。すなわち着地してすぐ次のジャンプの動作に入るためには、着地するのに目一杯の着地では次の動作に移れない。つまり良いランディングポジションが取れなけれはジャンプ練習する意味がない。

 このようにジャンプを難しく考えずに、各動作を分解して必要な動き・不必要な動きを見直してみたり、力を抜くことで頭で考える負担を減らしたりすることが、チャンピオンのいう怠け者のスケートの仕方らしい。

 たった一つのジャンプを跳ぶのにこんな綿密なプランがあるとは驚き。それほど難しいことなので全ての条件が整っていなければ成功するはずも無く、その状態で無駄に体にダメージを与える練習をしないのが「怠け者スタイル」ということらしい。

 昔のように猛特訓練習すればなんとかなる状況ではなく、高度な技術にトライするのに間違えたやり方では体のダメージを必然的に大きくしてしまうからこそ「怠け者スタイル練習方法」は現在に適した方法なのかもしれません。

 この激動期を制して世界タイトルを2年続けて取ったチャンピオンが伝えたいのは、高度な技術を要求される時代であるからこそ慎重に練習プランを立てた上でこの魅力ある競技に取り組み、「怪我で引退」とか、「上達する可能性のない練習をやり続ける」といったミゼラブルな選手生活を送って欲しくないというメッセージだと思いました。

 これは究極。「コンディショニングが出来ていなければ練習する意味がない」と考えている私の考え方にも近いと思いました。具体的に何が大事かというと、難しい技術の習得に向けて厳しい練習を積みゴールを目指すのでは無く、コンディショニングにより難しい技術を習得する練習に耐えうる体を作り上げる取り組みを幼少期から始めて土台を作るべきだと思います。