年齢不詳とはいえ実年齢はあるわけで、母を亡くし「おひとりさまの老後」が現実になりつつあるため

参考のために上野千鶴子氏の『おひとりさまの老後』を遅まきながら読んでみた。

「おひとりさま」という言葉がヒットし、累計111万部(現在はもっとだろう)を突破したベストセラーだ。

「おひとりさま」という言葉を生み出した功績は素晴らしいし、

書いてあることも立派で「なるほど」と思うこともあるのだが、なぜか共感より違和感が残った。

 

母を看取ってから、私は孤独死を恐れている。

なぜなら、孤独死は周囲に迷惑をかけるからだ。

「そんなの死んじゃえば本人は何にもわからないんだから、どうでもいいじゃない。孤独死上等」

などと威勢のいいことを言う一回り以上年上の友人もいるが

誰にも看取られず一人で死ぬことは構わないのだが、発見が遅れた場合の周囲への迷惑を考えてしまうのだ。

 

そこで、孤独死の不安解消になるのかと、また上野千鶴子氏の『在宅ひとり死のススメ』を読んだのだ。

ところが、上野千鶴子氏の信奉者には申し訳ないが、共感どころか反感しかなかった。

前作を読んだ時の違和感の原因がはっきりしたのだ。

 

上野千鶴子氏はすべての著書を「持ち家、貯金有り」で書いているのだ。

「賃貸、貯金無し」の私が共感できないのは当然だ。

しかし、111万部突破ということはそれだけ共感した方が多いということだ。

日本人はお金持ちが多いということだろう。

 

少し長くなるが、決定的に思った箇所を引用する。

 

「これまでの在宅看取りの事例のうちで自費負担がもっとも高額だった例を教えてもらいました。

最高額で月額160万円だったそうです。

びっくりなさるでしょうか?

わたしは逆にほっとしました。

(中略)

『それはどのくらいの期間、続きましたか?』と。

約2ヶ月半、およそ400万円です。

終末期は永遠には続きません。かならず終わりが来ます。

この程度の額なら、日本の小金持ちのお年寄りは蓄えを持っているのではないでしょうか。

小笠原さんによれば、在宅ひとり死の費用は30万から300万まで。

この程度を用意しておけば家で死ねる、そうです。」

 

以上は介護保険を使って、訪問介護、訪問看護、訪問医療の3点セット付きであるが

もちろん、葬儀など死後にかかる費用は含んでいない。

 

『慣れ親しんだ自宅で幸せな最後を迎える方法』と本の帯にあるが

結局、上野千鶴子氏のおっしゃる「この程度」のお金を持つ

小金持ちでなければ

在宅ひとり死はススメられないということか・・・。

 

持ち家も貯金もないが、かろうじて衣食住は足りているので

余分なお金がないだけで貧乏だと思ったことはない私だが

数百万のお金を「この程度」と言いきる上野千鶴子氏はいささか無神経だと思ってしまう。

 

それとも、それはやはり貧乏人のひがみで、日本人のほとんどにとって

数百万円は「この程度」のお金なのかもしれない。

 

参考文献:上野千鶴子著『おひとりさまの老後』『在宅ひとり死のススメ』