6月21日、夏至。
太陽が最も北に寄り、北回帰線の真上までくる。すなわち、一年のうちで一番昼間が長い日。
北欧など緯度の高い国では夏至の日にはお祭りが行われる。日照時間が貴重なため、太陽は信仰の対象になるのだろう。古代からの太陽信仰と、キリストの聖人の祝日が重ねられる。イエス・キリストよりも半年早く生まれたと言い伝えられる聖ヨハネの日なのだそうだ。
 
そんなお祭りみたいにハッピーで踊り出したくなるような1曲目、“Jackie Wilson Said”から始まるこのアルバムが、夏至の日の一枚。
 
 
St.Dominic's Preview / Van Morrison
 
ヴァン・モリソンの「セント・ドミニクの予言」。
聖ドミニクは、1170年にスペインで生まれたカトリックの修道士なんだそうだけど、その方がどういう方でヴァン・モリソンさんがどういうことを歌っているのかは、不勉強でよくわかりません、ってか、キリスト教の基礎知識がないので、訳していてもちんぷんかんぷん(笑)。
ただ、全体として聖なるものへの敬虔な思いや祈りや願いといったものが歌全体を通して歌われている感じはひしひしと伝わってくる。
中でも圧巻なのは11分にも及ぶ“Listen to The Lion”。
懐の深いゆったりとしたアコースティック・ギターで始まり、清らかにピアノが響く中で、天に響かせるように歌うモリソンの声は、やがてリズムのうねりとともに咆哮へと変わっていく。聴き終えた後には、魂をゴシゴシと洗われたみたいな、心地のよい虚脱感が残る。
続く“St.Dominic's Preview”にしても、軽快でフォーキーな“Redwood Tree”にしても、なんていうんだろうか、ナチュラルなグルーヴがすごく気持ちいいんですよね。安心できるというか、懐が深いというか、リズムのうねりとヴァン・モリソンの歌の滋味がなんとも味わい深い。この深みはやはり信仰の深さから来るものなのだろう。
そして、夏の夜風のような“Almost Independence Day”。
 
明日からは少しずつ日が短くなる。少しずつ短くなって冬至を迎えた先に再生が待っている。そんな一年のサイクルを人の一生と重ねながら、昔の人は人生の再生=生まれ変わり、転生を願ったのだろうか。