『ダンディー少佐』

 

公開 1965年

 

監督 サム・ペキンパー

 

出演 チャールトン・ヘストン、リチャード・ハリス、ジム・ハットン、マイケル・アンダーソン・Jr、ジェームズ・コバーン、ウォーレン・オーツ、センタ・バーガー、R・G・アームストロング、ウォーレン・オーツ、マリオ・アドルフ、ブロック・ピータース。ベン・ジョンソン、L・Q・ジョーンズ、ジョン・デイヴィス・チャンドラー。

 

予告編

 

 

あらすじ 1864年、南北戦争の末期。ニューメキシコで、チャリバ(マイケル・ペイト)率いるアパッチが、殺戮と略奪を行っていました。騎兵隊の1個中隊は現地に向かうと、アパッチに待ち伏せされ全滅します。本部では、ダンディー少佐(チャールトン・ヘストン)と側近のグレアム中尉(ジム・ハットン)は、兵力を補うために南軍の捕虜や脱走兵、犯罪者をアパッチ討伐の軍人として募集しました。

 

南軍の捕虜の中にタイリーン大尉(リチャード・ハリス)がいました。ダンディーは有能なタイリーンを副官にしたかったが、タイリーンは衛兵を殺害して脱走を図り死刑判決を受けていました。2人は士官学校のからの親友だったが、タイリーンが過去に犯した同僚殺しで、ダンディーが有罪判決を下したのが原因で不仲になっていました。タイリーンは南軍の捕虜の釈放を条件に、チャリバを討伐し誘拐された子供を救うまでの期間ダンディーの指揮下に入ります。隊には南軍の捕虜や犯罪者の他に民間人や黒人も加わり討伐隊が作られます。

 

ダンディーの北軍派とタイリーンの南軍派で編成された討伐隊は、対立しながらもアパッチが行くメキシコを目指します。道中、アパッチの人間が誘拐された子供を連れて隊の前に現れます。子供を救出した軍人は帰還し、ダンディーはアパッチから聞き出した潜伏先に向かいます。しかし、チャリバに襲撃されて隊員を失います。食料が少なくなった討伐隊はメキシコの村で調達するために村に行くが、村は略奪され尽くして何もありませんでした。ダンディーは現地に駐留して支配しているフランス軍を襲い、武器や食料を奪い、メキシコの村人達に与えます。

 

その日を境に討伐隊は、敵に回したフランス軍を避けながら、アパッチを追跡することになります。ダンディーは村の女(センタ・バーガー)と川で泳いでいると、アパッチに襲撃されて足を負傷します。自らの不注意が原因で怪我をして任務に支障をきたしたダンディーは、酒に溺れる日々を送ります。そんな彼を再起させたのはタイリーンだった。討伐隊は谷で急襲してきたチャリバが率いるアパッチに勝利しました。ダンディーは川を渡ってテキサスに行き、本国に戻る計画でしたが、川の行く先にフランス軍が待ち受けていました。討伐隊は無謀にも、フランス軍と戦います。戦いの最中に星条旗を奪われると、タイリーンは敵陣に乗り込み旗を奪い返すと、多勢を相手に善戦しますが、敵弾を受けて壮烈な最後を遂げます。この討伐で生き残ったのは僅か11名で、彼らは母国アメリカに帰還します。

 

 

あとがき 最近『ダンディー少佐』のオリジナル版を観ました。私が観たのは136分の作品で、現時点では最新版ですが、更に長尺の152分の物もあるようです。『ダンディー少佐』は編集権を巡ってサム・ペキンパー監督が大物俳優チャールトン・ヘストンと揉めたのは有名な逸話で、大物俳優との喧嘩が原因でサム・ペキンパーは数年間映画の制作から遠ざかります。

 

撮影は砦のシーンからラストの川でのフランス軍との戦闘までを時系列に沿って撮影されていて、物語の序章のアパッチによる殺害現場のシーンは最後に撮影されました。撮影はサム・ペキンパーの経験の浅さから、移動時間を考慮せずにロケ地を選んだために、撮影は難航しました。因みにロケ地選びには、チャールトン・ヘストンは不在でした。また脚本の大部分が未完成の状態で、メキシコ・ロケを始めたので、サム・ペキンパーにはかなりの重労働でした。この辺りの撮影現場のトラブルが製作費のオーバーに繋がり、映画会社はサム・ペキンパーの手腕に難色を示します。この辺りに映画会社の権利なども加わり、サム・ペキンパーの意図した作品には成らなかったようです。

 

俳優陣は後のペキンパー作品に携わる俳優が多数出演しています。ダンディーの側近の北軍の兵士は、当初はリー・マーヴィンの起用が検討されましたが、出演料の問題で代わりにジェームズ・コバーンが起用されました。ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン、L・Q・ジョーンズ、ジョン・デイヴィス・チャンドラーの4名はタイリーンの部下で南軍の捕虜の死刑囚役で出演しています。牧師役のR・G・アームストロングが興味深いのは、彼は若い頃は聖職者を目指していましたが、紆余曲折をえて俳優になり、『ダンディー少佐』では義憤に駆られて“聖戦”に志願した牧師役、前作『昼下がりの決斗』では敬虔なキリスト教徒の農夫、『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』ではビリーに悔い改めるように諭す保安官の役を演じていますが、どこか彼の人物像が反映されている役柄だと思います。そして馬泥棒の役で『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』で老保安官役を務めたスリム・ピケンズが出演しています。余談になりますが、『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』の劇中でボブ・ディランの「Knockin' on Heaven's Door」が効果的に流れますが、死に直面したスリム・ピケンズ扮する老保安官の歌だと思います。

 

物語の舞台となった戦場はメキシコで、討伐隊はアパッチとフランス軍を相手に交戦しますが、この辺りは賞金稼ぎとメキシコ・ゲリラ軍と三つ巴の戦いを展開した『ワイルド・バンチ』の原形とも言える作品だと思います(『ワイルド・バンチ』で見られるスローモーションを駆使した描写はないですが)。討伐隊が食料を求めて訪れたメキシコの村がフランス軍をはじめ多くの勢力に略奪され、困窮していましたが、討伐隊が文字通りフランス軍を討伐して、メキシコの村を解放します。メキシコの村人達が音楽を奏で、討伐隊とダンスをして楽しい祭りを行いますが、この辺りはサム・ペキンパーのメキシコに対する愛着が感じられて、とても好感が持てます。『ダンディー少佐』での体験が後の『ワイルド・バンチ』の成功に繋がったとのは言うまでもないと思います。