昔の友人と再会してお互いに変わったと感じることが多々ありますが、その中でも印象深かった想い出を記したいと思います。

 

私が高校生の頃に中学時代の友人と再会した時のことです。私の家庭は厳しく学生の私が音楽や映画を鑑賞することを両親は快く思っていなかったのもあり、私が音楽を聴き始めたのは高校時代の終わり頃からでした。私と再会した友人はそれまで音楽の話しをしたことがなかった私が「バッファロー・スプリングフィールドがこうだ、バーズはこうだ」と話すのを目の当たりにして、私の変貌ぶりに驚いていました。抽象的な例えで言えば再会した友人が新興宗教にハマって別人になっているのを見ているようでした

 

私はその当時(高校3年の時)、友人の家で食事をすることになり、私はドアーズのファースト『DOORS』とセカンド・アルバム『STRANGE DAYS』、ジェファーソン・エアプレインの『SURREALISTIC PILLOW』、ザ・バンド『 MUSIC FROM BIG PINK』のレコードを持って友人の家を訪れました。その時に友人のご両親も交えて夕飯の鳥の手羽元の甘辛煮を食べながら、ドアーズの話題になったのを憶えています。友人のお父さんはブルース・スプリングスティーンのファンで、音楽の造詣が深い人だったのもあり、ドアーズの名前とバンドの悪評は知っていました。今にして思えば音楽に無関心な人が『STRANGE DAYS』のジャケットを見たらかなり引いていたと思います

 

私は映画を通じてドアーズの存在を知り、ドアーズがきっかけで、サイケデリック・ロックに傾倒するようになりました。ドアーズのファースト・アルバム『DOORS』とセカンド・アルバム『STRANGE DAYS』、ジェファーソン・エアプレインの『SURREALISTIC PILLOW』は1967年にリリースされ、この時期のアメリカはサイケデリック・ロックが流行したサマー・オブ・ラブの時代でした。私は高校を卒業して社会人になってからもサイケデリック・ロックのアルバムは聴いていましたが、最も熱心に聴いていたのはこの当時(高校3年の時)で、私にとってはこの時期が私の“サマー・オブ・ラブ”でした。同じ年に海を超えたイギリスではビートルズが『SGT. PEPPERS LONELY HEARTS CLUB BAND』 をリリースし世界に衝撃を与えます。

 

ドアーズのドラーマーのジョン・デンズモアが記した『ドアーズ』(早川書房)を参考にするとレイ・マンザレクは当時を振り返って、「『STRANGE DAYS』は、おれたちが楽器と同じようにスタジオそのものにも実験的な工夫を凝らしてみた最初の作品だ。あれは8トラックで録音されているが、あの頃としては、驚くべきことだった。オーヴァーダビングをはじめとして、ありとあらゆることを試してみたものだ。今ならなんてことはないが、当時は8トラックというのは画期的だったんだ。だから、あの時点でグループのメンバーは五人になったといえる。キーボード、ギター、ドラム、ヴォーカル、そしてスタジオだ」と述べています。

 

『STRANGE DAYS』はファースト・アルバム『DOORS』と同じ年の1967年10月にリリースされます。『STRANGE DAYS』は『DOORS』がセールス的に成功したため、セカンド・アルバムのリリース前から50万枚の予約注文されます。そして『STRANGE DAYS』がリリースされた1967年10月にはアルバム『DOORS』が50万枚、シングル「Light My Fire」が100万枚の売り上げを記録します。

 

 

多くの人が指摘するようにファースト・アルバム『DOORS』が黒いダークなレコード・ジャケットに象徴されるどこかモノクロ写真のようなサウンドだとすると、シュールなレコード・ジャケットが鮮烈なセカンド・アルバム『STRANGE DAYS』はカラフルでよりサイケデリックな色彩が強くなった印象を受けます。奇妙な大道芸人達のパフォーマンスが行われている路上で、ファースト・アルバム『DOORS』の宣伝用ポスターが貼られているのは、異世界への入口のような佇まいです

 

前作と比べるとドアーズのソングライティングを担うギタリストのロビー・クリーガーのキャッチーでポップな楽曲が魅力的です。ドアーズのメンバーは後に殆どのアルバムのプロデュースを手掛けるポール・A・ロスチャイルドとは仕事がしやすかったようで、そしてエンジニアを務めるブルース・ボトニックの功績も大きかったと思います。

 

 

A③「Love Me Two Times」。アルバム『STRANGE DAYS』が完成した時にドアーズのメンバーはファースト・アルバムよりもいいものに仕上がったと自信を持っていましたが、シングルに向く曲がないので悩むことになります。どの曲をシングルとしてリリースするか、検討した結果1枚目のシングルがB①「People are Strange」になり、A③「Love Me Two Times」が2枚目のシングルとなります。

 

 

A⑥「Moonlight Drive」。邦題は「月光のドライブ」で、シングル・カットされたA③の裏面に配されます。 

 

 

B①「People are Strange」。邦題は「まぼろしの世界」です

 

 

B④「When the Music's Over」。邦題は「音楽が終わったら」です。B④は『DOORS』に収録の「The End」と対を成す10分以上の長尺の楽曲で、「The End」と並んで私が初めてを聴いた10分以上の楽曲です。B④は「The End」と共にアルバムのラストを飾るのに相応しい楽曲だと思います。

 

 

 

参考文献 『ドアーズ』 ジョン・デンズモア著 飛田野裕子訳 早川書房