『アウトサイダー』

 

公開 1983年

 

監督 フランシス・フォード・コッポラ

 

出演 マット・ディロン、C・トーマス・ハウエル、ラルフ・マッチオ、ダイアン・レイン、ロブ・ロウ、エミリオ・エステベス、パトリック・スウェイジ、トム・クルーズ、レイフ・ギャレット、ダレン・ダルトン、トム・ウェイツ。

 

予告編

 

 

あらすじ 14歳のポニーボーイ(C・トーマス・ハウエル)はオクラホマ州の田舎町のタルサで暮らしています。ポニーボーイの住むイーストウッドは貧困層が暮らす地区で、彼はグリーサーと呼ばれる不良グループの一員で、ジョニー(ラルフ・マッチオ)と兄貴分のダラス(マット・ディロン)と行動しています。近隣のウェストウッド地区は富裕層が住んでおり、こちらにはソッシュという不良グループがあり、彼らは事あるごとに対立していました。

 

ある夜、3人はドライヴ・イン・シアターに行くと、観客の中にソッシュの女の子2人がいました。ダラスがちょっかいを出すと女の子の1人のチェリー(ダイアン・レイン)と口論になります。ポニーボーイとジョニーは映画館でグリーサーのツー・ビット(エミリオ・エステベス)と会い、ソッシュの女の子2人を送っていくことになります。彼らは偶然チェリーのボーイ・フレンドのボブ(レイフ・ギャレット)が乗った自動車と会います。ボブがグリーサーの3人に絡むと、チェリーが喧嘩を止めます。

 

深夜、帰宅するとジョニーの家では、両親が夫婦喧嘩をしていました。ポニーボーイの家では、長男のダリー(パトリック・スウェイジ)が心配していました。ダリーは亡くなった両親に代わって家事全般をこなして親の代わりを努めています。ポニーボーイの悪びれない態度に腹を立て、次男のソーダポップ(ロブ・ロウ)がとめる間もなく、ポニーボーイを殴ります。ポニーボーイは家を飛び出すと空地で寝ていたジョニーのところへ行きます。深夜2人が公園にいると、再びボブの自動車が現れます。2人はソッシュに暴行を受けると、ポニーボーイを助けにいったジョニーはボブをナイフで刺殺してしまいます。

 

ポニーボーイとジョニーが頼れるダラスに相談しに行くと、彼は郊外に廃屋になっている教会がありそこに身を隠せとアドバイスします。暫くしてからダラス来て2人と合流すると、2人の煙草が原因で教会が燃え上がり、遊びに来てた子供達が教会に閉じ込められます。2人はダラスが止めるのを振り切って、火の中にとび込み子供たちを救出します。しかし3人は火傷を負いその中でもジョニーは重症です。ジョニーは病室で「俺は前に死にたいって言ったけど、まだ死にたくない」とポニーボーイに呟きます。

 

ある時、グリーサーとソッシュは因縁の対決をすることになります。グリーサーのリーダーのダリーが先頭になって決闘の場所に行き、大雨の中での大乱闘の末にグリーサーはソッシュに勝ちます。喧嘩の勝利を知らせに病院へ戻ったダラスはジョニーの死を知ります。自暴自棄になったダラスは衝動的にスーパーに強盗に押入ります。パトカーに追われたダラスは仲間のグリーサーの前で射殺されます。ポニーボーイは、ジョニーが読んでいた「風とともに去りぬ」に挾まっていた手紙を見つけます。そこには「いつまでも黄金のままでいろ」と綴っていました。

 

 

あとがき 中年の方なら出演者の名前を聞いてピンとくると思いますが、『アウトサイダー』は80年代にアメリカ映画界で活躍した若手の俳優・女優が多数出演した映画で、ミュージシャンの中からはレイフ・ギャレットが出演しています。日本では彼らはYA(ヤング・アダルトの略称)スターと呼ばれ話題になります。興味深いエピソードに出演者のトム・クルーズは『アウトサイダー』の出演にあたって1番目立たない地味な役を希望しましたが、後に彼はYAスターの中では多数の有名作に出演し、知名度や商業的な面では最も成功を収めることとなります。

 

映画はかなり原作に忠実に描かれています。原作者のスーザン・E・ヒントンはオクラホマ州の田舎町タルサの出身で、彼女が見聞きした事件が小説の元になっています。彼女は15歳の時から小説を書き始めタルサ大学在学中の時に、処女作『アウトサイダー』(The Outsiders, 1967年)を発表し、全米でベストセラーを記録します。彼女はダラス(マット・ディロン)が入院している病室の看護師役で出演しています。そして同じ年にスーザン・E・ヒントン原作の『ランブルフィッシュ』もフランシス・フォード・コッポラによって映画化され、彼女はここではコッポラと共同で脚本を執筆しています。

 

『アウトサイダー』は青春映画ですが、恋愛の要素は薄く(対立するグループのメンバーへの片想いの描写はあり)主軸となるのは喧嘩で、喧嘩を通じて芽生える仲間同士の友情を描いています。貧困層の若者グループ(グリーサー)と富裕層の若者グループ(ソッシュ)の対立について、劇中でチェリーが「ソッシュが恵まれてると思う?リッチな家庭。山の手育ちのソッシュ。でも違うわ。ほんとは悩みもあるのよ」と話すシーンがあり、グリーサー(一般の人も含めて)の考える富裕層=何の苦労もなく生きてきた人という図式はかなり短絡的で飛躍した思考だと思います。そして雨が降る中で行われたグリースとソッシュの大乱闘は両者が泥まみれになり文字通りの泥仕合となります。

 

ポニーボーイとジョニーが貨物列車に乗り逃亡した郊外にある廃屋となった教会は、野生動物が住み着きのどか雰囲気です。ここでの教会は2人の隠れ家でもあるのと同時に、少年しか入れない世界です。2人は赤く染まった夕陽を見ながらの空や木の色や夕焼けの話題になり好きな詩人の詩を暗唱するところは、少年達を取り巻く争いの絶えない環境とは対称的な静かで寓話的な世界を感じます。そこで2人は自然を見て感動する心を黄金だと感じます。

 

『アウトサイダー』の音楽を担当するのは監督の父のカーマイン・コッポラです。主題歌となった「Stay GOLD」はスティビー・ワンダーが歌詞を書き、作曲はカーマイン・コッポラが担当します。

 

 

スティビー・ワンダー 「Stay GOLD」。

 

 

不良少年を描いた『アウトサイダー』の劇中で実年齢が未成年の俳優(YAスター)がタバコを吸うシーンがあります。日本では80年代はテレビでタバコのCMが放映されていたので、この辺りは気にも留めないで観ていました。現在の価値観では問題になっていたと思います。昭和も含めて80年代は現在と比較すると社会が寛容だったと思います。

 

『アウトサイダー』には80年代に役者として活躍するトム・ウェイツが出演しています。僅かの一コマですが、役名がありました。