今日のブログは一般向けというより、小児科研修医や小児に不慣れな他科医師向けかもしれない






私は部下のドクターが外来をする、というときに、1つだけ必ずお願いすることがある



受診してきた子どもと、保護者が何を求めて受診しているのかをよく考えるように、ということだ



例えば、3歳の幼児のお母さん「登園したときに熱があって。。。元気です。解熱薬は持っています。」と言ったとする



残念な小児科医はここで「え、熱の出始めだから特に迅速検査してもなにも出ないし、解熱薬しか出せるものないのに持ってるなら、なぜ来た??」と思う



これ、わりとよくある話だ



ここで、受診した理由をよく考えてほしい



保育園に子どもを預けているお母さんは、つまり仕事をしているなど、園に預けている理由がある



しかし、熱が出たために急に子どもを連れて帰るよう言われたのだ
園によっては「◯◯が流行っているので検査してください」と指定することまである



急に子どもが園にいけなくなり、原因によっては自分の仕事も数日休まなければいけないかも。。。困る。。。と思いながら受診しているのだ



ということは、子どもの望むことは熱が下がって早く元気になりたい、かもしれないが、親の望むことは、原因を早くはっきりさせて、いつまで自分が仕事を休まなければいけないかを知りたい、ということだろう



なら、声のかけ方も自然と分かってくる



例えば私なら
「急に休みになって大変でしたね。

症状からはまだ熱だけなので原因ははっきりとは言い難いです。

園で溶連菌と手足口病が流行っているなら、溶連菌は検査できます。

ただし、迅速検査は発熱から24時間以上経たないと感度が下がるので、明日までは解熱薬で様子をみて、明日に検査をしたほうが1回で済み、お子さんは楽です。

今日検査をして陽性ならいいけど、陰性だからといって溶連菌ではないとは言えません。

手足口病には迅速検査がなくて症状診断になるので、ぶつぶつが出てきたら分かります。」



こんな感じで話す



原因が分かれば自ずと休まなければいけない期間はわかるので、それは原因が推測できたときに話す






また別のケースでは、生後10ヶ月の乳児を連れたお母さん「鼻水がひどいです」と言って受診したとする



残念な医師は「鼻風邪ですね、風邪薬を出しておきます」で終了だ



ここでも少し考えて、そしてお母さんに聞いてほしい



鼻汁がすごく多いんですね、他に困ったことはありますか?



すると、お母さんはこう言うときがある



「息苦しいのか、咳込みもすこしあって、何度も起きるんです。それで機嫌が悪くて、私が寝れてません」



そう、このお母さんは、自分が寝れていないことが一番の主訴だったのだ



ならなんと言おう?



「お母さんが寝不足か、それはしんどいですね。

喘息でないなら、咳込みは鼻水が垂れ込んでの咳かもしれませんね。

鼻水のキレを良くする薬を出します。

でも鼻水を止める薬はないので、鼻は適宜吸ってあげるしかないです。

吸引器はお持ちですか?(ここでオススメの吸引器を提案する)

夜咳込んだときは身体をしっかり起こして背中をトントンして垂れ込みを動かしてあげましょう。

鼻水が多いのは数日で、ウイルスが排出されるとだんだんましになります。

今がしんどい時期なので、無理せずお父さんと夜起きたときの対応を交代しながらみてください」



実際に私が言った内容だが、お母さんがしんどそうなので、鼻風邪にしては少し話し込んでしまった



しかし、んどそうに診察室に入ってきたお母さんはすこし表情が穏やかになって帰っていった






長引く咳だってそうだ



「子どもの咳が2週間以上ずっと止まらないです。咳止めを下さい」と言われたら、言われた通りに咳止めだけ出して帰すのも、「咳止めを出せ」という保護者からの指示に苛立って、強い態度で「それは違う!」とつっぱねるのも違うだろう



長引く咳はマイコプラズマ肺炎のこともあれば百日咳のこともあれば喘息、咳喘息のこともある



まずは精査をしなければいけない旨を丁寧に説明して、それから処方の提案をすれば、それを受け入れてくれない親はいない






診察が終わったとき、私は必ず「他に何か気になることはありますか?」と聞く



小児科医によってはこの言葉、怖くて言えないだろう



必ず診察を長引かせる言葉だからだ



しかし私は悪魔の言葉ではなく、魔法の言葉だと思っている



なにも無ければいいけど、なにかある人はけっこういるからだ



これを言うだけで、子どもを連れてきた保護者の方は安心すると私は信じている



とりあえず的確な薬だけさっさと出してくれ、と思っている保護者が居るのも知っている



私は数をさばくのには向いていないのだろう



それでもこのスタイルは曲げるつもりはないし、他院で救われなかったご家族が救われることもあると信じて診療している



もちろん、子どもに適切な診断、治療をしていることは大前提でのお話だが



これを偶然みた診療のスタイルに悩む医師の方の参考になれば幸いだ



薬の自販機になってはいけない



親が幸せなら子も幸せなのだ



世の小児に携わる医師が、子どもに何が一番必要か、よく考えて診療してほしいと切に願う