最近忙しすぎてなかなか投稿できなかった
いつか小児科医や新生児科医の仕事内容などについて書こう。一般には知られていないことは多いはずだ
ところで、今話題の小学校健診に関して思うことをどうしても書きたいと思った
小学生の親なら誰しも知ってると思うが、年に1回健診が行われている
計測をしたり、視力、聴力、心電図、側弯がないか。。。
内容はググったらすぐ分かる
今話題になっているのは、小学校健診で下半身を診る必要があるのかどうか?配慮は?ということ
結論から言うと、下半身は診察の必須項目ではないはず
なので、必ずしも診る必要はないが、診る小児科医がいてもおかしくはないとは思う
一番の問題は、説明と配慮の不足だろう
説明しよう
男児の外陰部や恥毛、腋毛、
女児の外陰部や乳房、恥毛、腋毛、
これらを小学校6年間の間に急激に変化していく
その成熟度合いはTanner(タンナー)分類という指標で評価される
二次性徴の成熟度合いが高い、早いと小学校低学年〜中学年で評価されると、MRIで下垂体という脳の一部に腫瘍ができていないか、などの器質疾患を除外されたうえで、思春期早発症と診断がつく
思春期早発症と診断がつくとどうなるか?
一番の問題は身長だ
思春期早発症になると急激に身長が伸びるのだが、早い段階で急激に身長がのびると、頭打ちも早くなるので、最終的には低身長になりうる
なので、思春期早発症と診断されたら月に1回くらいの頻度でホルモン製剤を皮下注射される
そうして一時的にホルモンを調整すると、最終的な身長の伸びが改善されるのだ
もしかしたら、今話題なってしまっている健診担当医は思春期早発症をよくみている小児科医で、健診の必須項目ではないとはいえ、「小学生で性成熟度を評価するのは当たり前」と考えている人なのかもしれない
必要なら診療につなげ、思春期早発症の検査、治療を行うのかもしれない
なので、健診で性成熟度を診ること自体を否定するわけにはいかないかなと思っている
ただし!
ただし!!!
声を大にして言おう。
圧倒的配慮不足!!!
私は一般小児の病棟においては、親が付き添いをしていない小学、中学の女児の病室に一人では入らないようにしている。看護師に声をかけて一緒に入るなど配慮している(男児でも配慮すべきかどうかはまだ結論がでていないが。。。)
診察のときは病棟、外来問わず、小1を目安に服と肌着を手前に引いて、下から聴診器を入れて聴診している
大人の女性なら全員そうされるべきことを、小1からするようにしている
ちなみに、聴診の際に肌着の上から聴診器を当てることに関してはどうか?
これは、診療上、わたしもたまにやるのだが、肌着の上からの聴診を当たり前にしてはいけないと思う
というのも、子どもはときどき大人より心音が小さい子かいるので、聞こえにくい子がいる
また、本当に心雑音を疑ったとき、聴診器ををひっくり返してベル型という形を駆使するのだが、ベル型は膜型と違って密着していないとむしろ聞こえにくいので、ベル型は肌に直接当てるのが基本だ
だからこそ、服を手前に引いて聴診するのがベストだと思う
バスタオルなどを当てることもできるが、それは制服の構造上の問題などで服を手前に引けないときに使う
診療上、外性器をみなければいけないこともある
そのときは年齢に応じて言い方、内容は変えているが、幼児以降には何かしらの声かけをしている
小学生ともなれば、親と子両方になぜ下半身をみる必要があるのか、それによってどんなことが分かり、どう診療につなげるか丁寧に話してから「恥ずかしいけどごめんね」と言って、もちろん手袋をして診察している(これは衛生面での配慮)
健診で1人1人にそれは無理だろう
なら事前に説明会でそれは伝えなければいけないし、せめて診察のときに一言声は掛けなければいけないだろう
それを声かけと説明なしに許されていたのは昭和までではないか?
ましては令和の時代に、性に関する繊細な羞恥心がでてくる小学生に対してなんの配慮もなく診察するのは、現代の小児科医としては無理だろうとしか思えない
ただ、お願いしたい
配慮不足に関しては当該学校、自治体どころか、全国の小学校、中学校、小児科医がこれを機に熟慮し、今後の配慮の方法に活かすべきことだ
個人の医師の名前やクリニック名などを特定して国民総出で批判するようなことは決してしないでほしい
仕事上の配慮不足やミスをすることは皆さんもあることだろう
それを国民総出で責められたらどうだろう
存在を否定され、今までの仕事ぶりを否定されたらどうだろう
もうそんな人は二度と働けないだろうし、最悪、命に関わるほど健康を損なう
健診を小児科医の「最もしたくない仕事」にしてはならない
その医師に悪気がないのであれば、個人を特定するようなことではなく、全国で健診がどうあるべきかを考えよう