牛田智大くんがソリストとして演奏するラフマニノフの第2番のコンチェルトを本日聴きに行った。
ラフマニノフ自身が演奏する自作自演の録音を意識しているのか、全楽章アップテンポで弾ききった。一部、大オーケストラのtuttiにソロがかき消されてしまう部分もあったがアップテンポで弾ききるだけのテクニックは持ち合わせているし、とにかく指が速く動くことはまぎれもない。
たたみかけるような聴かせどころは、よくツボを押さえていて一気に弾ききる。
とはいうものの、味も素っ気もない演奏だった。
音色に変化がなく単調なのだ。
たたみかけるような力強く明確な音はよく出る。
しかし、霧でベールにつつまれたような繊細な音色やテンポの微妙なゆらぎ、抒情性が彼には感じられない。特に第二楽章の、息を飲むような美しい楽章においても相変わらず同じトーンで進行する・・・。
彼の演奏の「素振り」はとにかく表情豊かでオーケストラと合わせようという意思と誠意が感じらるのだか、変化に富む顔の表情や素振りが実際の演奏、音色に表出し、反映されないのがとても残念だ。
彼は才能あるピアニストであり、彼の年齢からして無限の可能性を秘めていることは確か。
だからこそ、、、今、彼はコンサートをやりまくるのではなく、この伸び盛りの時期に演奏活動から離れ、しっかり自己鍛錬すべきと僕は思う。
おそらく周囲の、欲の皮のつっぱった大人たちが、「天才少年」という大看板を掲げて、経済的に余裕のある中高年のおばさま方を熱狂的なファンに仕立て上げ、金儲けをしようという、そういう図式があるのだ。
そこにマスコミが騒ぎ立てれば、ますます彼の才能を、彼の将来性を台無しにしてしまう。
彼の年齢であれだけの指さばきができ、かつ中高年女性を魅了させるに足る王子様のような風貌の男の子は、そうはいない。
そのことが欲の皮のつっぱった周囲の大人たちにとっての、彼の最大の「商品価値」「利用価値」であり、最強のセールスポイントなのだ。彼がその後 たいした成長もせず二十歳を迎えてしまえば、その価値はただの石ころとなる。もちろん才能ある人なので成長しないなどということはあり得ないだろう。
ただ、現状のような多忙な演奏活動を続けていることが、その成長を著しく妨げている。そのことが彼にとって大きな問題なのだ。彼は利用されている。
コンサートの帰りの道すがら、皆が口々に、「素晴らしかったわねー」と言っている声を聞きながら、僕はそう思った。