Drop kick  アンデウソンと悪魔のブルーズ   | ☆ 格闘技 LOVE インパクト ☆極嬢魂レンノカ 降臨☆

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Drop kick
http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar425067


橋本宗洋氏 コラム


2013年最後のUFC、そのメインイベントで、年間のどの試合よりも衝撃的なシーンを目にすることになってしまった。

 ミドル級タイトル戦、クリス・ワイドマンとアンデウソン・シウバのリマッチである。

前回の対戦はワイドマンがKOで王座奪取。

いつものようにヒョイヒョイとパンチを避けていたアンデウソンだが、ついにアゴに一発もらってダウン、そのまま追撃のパウンドで失神した。

 長期政権はこのまま終わるのか。

それとも、前回の対戦はアンデウソンがナメていただけで、しっかり闘えばまだまだ強いのか。

しかし、ここまで無敗のワイドマンも相当に強いはず……と、さまざまな予想と希望が入り混じった試合だ。

憎たらしいほど強かったアンデウソンには、やっぱり強いままでいてほしいというファンも多かったはず。

 1Rはワイドマンが支配した。タックルを仕掛け、首相撲に捉えられたところで右フックをヒットさせてグラウンドに持ち込む。

さらにガードポジションからの反撃を狙うアンデウソンに的確かつ強力なパウンドとヒジ。

やはりこの男、ただものではなかった。

一方で、完全な体勢からのものではないパンチで崩れてしまうアンデウソンの様子も気にかかる。

 そして2Rだ。ローキックで調子を取り戻したかのように見えたアンデウソン。

しかし、思い切り放った一発の直後、悲鳴とともに彼は倒れ込んだ。

そのまま試合は終了。

誰も予想できない結末だった。

 スローリプレイを見ると、ローが当たった瞬間、アンデウソンの左足、そのスネから先がグニャっとムチのようにたわんでいた。

完全に折れた、ということだろう。

こんなことが起きるとは。

しかも、アンデウソンの身に降りかかるとは。

 もちろんこれはアクシデントだ。

悲劇としか言いようがない。

ただ、この信じられないような光景こそ、アンデウソンにふさわしいようにも思えた。

言い方は難しいのだが、変に腑に落ちたとでもいえばいいのか。


 アンデウソンが勝って王座を取り戻し、あらためてその強さを証明する。

そうなったらなったでよかったのである。

ただ、“アンデウソン王朝の終わり”がくるのであれば、それは単に“勝った負けた”というレベルの話じゃ済まないんじゃないか、ということだ。

 繰り返すが、アンデウソンが負けてよかったとか、ケガして気持ちがいいってことじゃない。

 ツイッター上では、ワイドマンの勝利を強運のためだとし、

「悪魔に魂を売ったのか」と評した選手がいた。

だがそれを言うなら、これまでアンデウソンが見せてきた強さ、解明不能の魅力こそ、悪魔に魂を売ったんじゃないかと思えるものだった。

 前回のKO負けと今回の負傷は、悪魔との契約期間が終わったためか。

そんなふうに思えるような存在だったのだ、アンデウソンは。

 いやもちろん、実力あっての話である。

しかしどんなスポーツにも、運の要素はあるだろう。

たとえば今回のような負傷だって、避けようと思って避けられるものじゃない。

アンデウソンの連勝と信じられないようなフィニッシュの数々は、見方を変えると“どんな選手にも起こりうるアクシデント”を振り払い続けた結果だったのかもしれない。

 そんなアンデウソンが、選手にとって最悪ともいえる悲劇に見舞われてしまった。

やはり勝った負けた、強い弱いではなく、“魔力が奪われた”と考えたいのだ。

アンデウソンほどの選手が王位から引きずり降ろされるのは、人智を超えた理由によるものだと思いたい。

 魔力を失った“人間アンデウソン”がこれからどうなるかはわからない。

まずはしっかりとケガを治してほしいと思うが、回復までに長期間かかるのは間違いない。

そこから再び闘志を燃やし、オクタゴンに戻ってくるのか、それとも……。

 どうなるにせよ、アンデウソンが打ち立てた防衛記録は偉業という以外の何ものでもない。

これほどファンを驚かせ、(熱狂や興奮にとどまらず)心をザワつかせた選手もいないといっていいだろう。

アンデウソンの魔力に、我々は魅入られていたのだ。

(橋本宗洋)