被災ホームレスから世界チャンピオンへ クリス・ワイドマンのデタラメパワー | ☆ 格闘技 LOVE インパクト ☆極嬢魂レンノカ 降臨☆

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Drop Kick
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2012年10月29日に米東海岸に上陸し、ニューヨークなどに甚大な被害をもたらしたハリケーン・サンディ。

ニューヨーク市民約38万人に避難指示が出され、ニューヨーク州やニュージャージー州の約850万世帯が停電、158人の死者を出したと報じられている。

ニューヨーク州ロングアイランドのクリス・ワイドマンの自宅は、この台風による洪水で押し流されてしまった。

ワイドマンが通うヘンゾ・グレイシー柔術アカデミーのジョン・ダナハーが語っている。

「シウバ戦の前、クリスは事実上ホームレスだった。

破産同然だったんだ。

ハリケーンに加え、2度の肩の手術で1年間試合をしていなかった。

どうにかシウバ戦を切り抜けるまで、私がポケットマネーから何千ドルか貸していたんだ。

彼の生活は混乱そのものだった」

ワイドマンも自身の困窮ぶりを認めている。

「サンディにやられて破産してしまったけれど、それが人生の底というわけでもないんだ。

ホフストラ大学でレスリングコーチをしていた頃には、もっとカネがなかった。

子どもの頃にはそれよりもっとカネがなかった」

「なにもできなかった。

なににつけても、とにかくカネがなかった。

ローンで1,400ドルの柴犬を買ったんだが、返済するのに3年かかった。

全部で結局3,800ドルくらい払ったんじゃなかったかな」

「いつの日か、そこそこの暮らしができるようになればいいと思っていた。

そこそこの暮らしというのは、友達とランチに行っても、カネが足りるかどうかハラハラしたり、罪悪感に駆られなくていいような暮らしのことだ」

貧困だけでなく、子どもの頃にはイジメや虐待にも耐えていたのだという。

「僕はそこそこタフな街で育った。

子どもの頃にはいじめられもしたし、ケンカもかなりやった方だ。

兄貴は近所でも最強のガキ大将で、僕のこともかなり絞り上げた。

クッキーを取りに行かなかったから、という理由で、5キロのおもりを頭に落とされたこともある。

自転車で宙返りをやっていて、肩から落ちて鎖骨をきれいに折ってしまったときには、

兄貴はまさか鎖骨が折れているとは思わないものだから、

友達の前で僕の腕を殴りつけ、本当に折れているなら泣くはずだろとか言っていた。

そして、そこにいた兄貴の友達全員から殴りつけられた。

あれは最悪だったな」

7月6日のUFC162でUFCミドル級チャンピオンとなったワイドマンは、ロングアイランド地区では常に握手や写真を求められるローカルヒーローになった。

取材のリクエストも3倍増だ。

ワイドマンの住むナッソー郡では、7月17日が「クリス・ワイドマン・デー」と定められた。

チャンピオンになって一番大きな変化は、やはり金銭的な余裕だ。

ずっと借金を背負っていたワイドマンが、いまではまともに動くクルマを即金で買い、新しい家も買った。

レスリングの練習と心理学の学位を得たホフストラ大学の学資ローン8万ドルも完済した。

「生活はかなり変わった。

これまでより多くの人に気がついてもらえるようになった。

ハリケーンでやられた家から出て、近隣に新しい家を買うこともできた。

いろんなことがきちんとするのは気分がいいよ。

これまではとっちらかっていたからね。

ちゃんと部屋があって、ものが置けるというのはいい」(ワイドマン)

驚いたことに、前回のシウバ戦に備えたキャンプが、ワイドマンにとって初めてのまともなキャンプだった。

「それ以前は、試合自体が行き当たりばったりなトレーニングみたいなものだったんだよ」とダナハーは語る。

「クリスは試合の1週間前にここにやってきて、いくつかのムーブを覚え、それで一本勝ちを収めてきたんだ」。

2011年のトム・ローラー戦で決めたダース・チョークは、試合の数日前の練習で初めて試した技だった。

「ロッカールームではみんな爆笑だったよ。

クリスは、これが自分のやり方さ、なんて言っていたけどね」

レイ・ロンゴも、行き当たりばったりな状況での強さを重視している。

もっとも彼自身はそのことを「グラスルーツな強さ」と呼んでいる。

そしてそのやり方で、GSPを倒してベルトを奪ったマット・セラと、

アンデウソン・シウバを倒してベルトを奪ったクリス・ワイドマンという、

リアル版ロッキーともいえる2人のチャンピオンを育て上げたのだ。

実際にワイドマンは、UFCでの最初の2試合は負傷選手の穴埋め役としてショートノーティスで登場、

まさに行き当たりばったりな強さを発揮して、アレッシオ・サカラとジェシー・ボングフェルドに連勝している。

ワイドマンは、今回の試合に向けた思いを次のように語っている。

「どんな困難でも、どんなに厳しいときでも、そこを切り抜けることで今の自分があると思うんだ。

困難を切り抜けてきた人はタフなんだ。

だから、いまの自分を作ってくれている過去の経験には感謝している」

「今回は進化した自分をお見せする。

前回は、ハリケーンと2度の手術と1年のブランクを経験した。

だから自分でも自分に疑問符が付いていた。

でも今回は、まともなキャンプも張ったし、負ければ何の言い訳も立たない。

タイミングは最高だし、体調もいい。

前回の試合以来、体重もずっと維持したままなんだ」

「シウバがまた試合中におどけたまねをするかどうか、そんなことは心配していない。

ヤツのガードに引き込まれようが、ヤツが急に逆立ちしようが、僕には関係ない。

手を上げるも下げるも、それはヤツの問題であって、僕は気にしない」

「僕のゲームプランを今から発表しておこう。

まず前進する。

そしてシウバにプレッシャーをかけ、逃げ道をふさぐ。

シウバが手を下げていたら顔を殴る。

手を上げてパンチを防ごうとするなら、テイクダウンを決めてやる。

僕は殴られることは怖くない。

アゴを下げ、歯を食いしばってとにかく前進する。

どんなパンチを出されても関係ない」

「僕は実は前回の試合はそんなに気に入っていない。

そんなにうまくいったとも思っていないんだ。

もっといいパフォーマンスができる。

ちょっと試合勘が戻りきっていなかった部分もある。

もっと別のやり方ができたはずだと思う部分がたくさんあるんだよ」

「アンデウソン・シウバをもう一度倒す。

それでこそ最初の勝ちも、王者としての自分も、しっかり確立されることになるんだ」


(文 高橋テツヤ Omasuki Fight)