「台湾の声」【李登輝さんに接して】台湾研修で変貌した学生たち  | My Flame

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【李登輝さんに接して】台湾研修で変貌した学生たち 

日本李登輝友の会メールマガジン「日台共栄」より転載

【機関誌「日台共栄」2月号:「台湾と私(34)」】


             羽生 浩一(東海大学准教授・本会理事)

「安倍さん、“謙虚”をやりなさい、とお願いしています」

 日本は今、複雑な国内外情勢のなかで試されている。抵抗勢力に対峙しつつ、日本が抱える問題をどう処理して行くのか。2012年末に2度目の政権を担って間もない安倍晋三総理大臣に、李登輝元総統が贈られた言葉だ。

 2013年2月25日から4泊5日の日程で、東海大学のゼミナールの学生を引率して台湾研修旅行を実施した。その折、27日に学生7名と私は李元総統への表敬訪問が叶い、2時間にも及ぶ会談が実現した。

 学生たちの質問に誠実丁寧にお答えいただくなか、李元総統は安倍政権誕生に高い期待を寄せ、難問が山積する日本政治の舵取りのために冒頭の助言をされたこと、また、東アジアの平和に台湾と日本の関係強化は必然だという前提で、総統時代に着手して17年間滞ったままの尖閣諸島付近の海域での台湾の漁業権交渉再開への期待を熱っぽく語られた。

 まさかその直後の4月になって急転直下、日本政府が台湾と漁業交渉のテーブルに臨む姿勢を表明し、漁業協定を締結することになるとは思ってもみなかった。歴史は熱い想いを持つ人と人のつながりによって作られると実感した。

 本学と台湾の縁は意外に深い。かつて李登輝元総統の来日で中国から横やりが入った時に、そっと入国の手助けをしたのが東海大学の創設者で逓信院総裁、衆議院議員を歴任した松前重義博士だったという。本学でこれまで数多くの台湾からの留学生が学び、毎年秋には台北で同窓会が催されているが、近年そうした縁が薄れつつあった。だが、東日本大震災の直後から、最大の隣人愛を台湾は示してくれた。今こそ日台の関係を重視すべき時なのだと、学生とともに研修旅行を企画した。

 研修旅行のテーマは、日本人学生が「3・11後の日本の今」を自分たちの言葉で伝えること、日台間の関係と将来について歴史的経緯も含めて現地の人たちと直接語り合うことであった。表敬訪問をはさんで、26日には台中の東海大學で親日的な若者たちに迎えられ、28日には「二二八事件」の記念式典に参列して献花を行い、日本語世代の親を持ち、戒厳令時代の教育を受けた女性に「家の中と外では日本について教わることが全く違っていた」という話を伺った。その晩は「友愛グループ」代表の張文芳さんに民間人から見た台湾の戦前戦後について語っていただく夕食会を催した。

 張さんは、日本人から中国人、そして台湾人へと複雑なアイデンティティの変遷を余儀なくされた世代である。日本人学生の「日本語世代の方々に、日本政府が今、日本人にしますよ、と発表したらどうしますか」という遠慮のない質問に、80歳半ばの張さんは「20年前なら飛んで行ったでしょう」と即答された。一同が一瞬黙り込んでしまうほど、当事者の証言の重みに肉薄する瞬間であった。

 研修旅行実施の3カ月前から事前研究はしていたが、わずか4日間の実体験を通して、参加した学生たちがみるみる変貌して行った。断片的な知識が、体験を通して自分の言葉で自信を持って語れるものになっていく。ジャーナリズムや広報の仕事を志すネット世代の若者には、実体験をともなう体験学習は不可欠であろう。

 正しい歴史認識と現代感覚を持ち、主体的に考えて行動できる若者を育てることが、日本の教育の場での喫緊の課題であると私は考える。

 そうした資質を備えた上で、“謙虚”に事を進めることが問題解決に至る道であると、李元総統はこれから社会の荒波に漕ぎ出る学生たちに向けてもメッセージを贈られたのだと思う。




『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html