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■「加瀬英明のコラム」メールマガジン
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送信日 : 2014/01/30 (Thu)
題 名 : 社会と国に幸せを運びたい
冬になると、私の誕生日が巡ってくる。昨年も朋友が130人あまり明治記念館に集って、祝杯を挙げてくれた。
12月に、77歳になった。だが、司会者が「喜寿」を迎えたというのを、他人事(ひとごと)のように聞いた。あめつちの理からいえば、暮年に入っているのだが、実感がない。
そういえば、レーガン大統領が71歳の誕生日を迎えた時に、ワシントンを訪れていた。レーガンは前年に大統領に就任していた。
翌朝の新聞で読んだが、親しい友人がホワイトハウスに集って、誕生日を祝った席上で、レーガンが「今日は、私の30歳の誕生日の41周年を祝ってくれて、ありがとう」と挨拶したところ、拍手が鳴りやまなかったということだった。
私は40代の時に通産省のお使いとして、アフリカの南部諸国を巡ったことがあった。
ジンバブエを訪れたところ、閣僚が夕食会を催してくれた。南アフリカ共和国の北に接する隣国である。
閣僚はイギリスの名門大学で、学んでいた。ワインの応酬をかわした後に、意気投合したと思ったので、「貴国からわが国にお出で下さる方々は、当然、パスポートをお持ちですが、貴国には戸籍がなく、生まれた時に教会で洗礼を受けた者の他は、年齢が分からないと聞いています。どうやってパスポートに記した年齢を、調べられるのでしようか?」と、たずねた。
すると、「自己申告によります。日本や、欧米の先進国では何年何ヶ月何日と、全員の年齢が記録されていますが、本人がそう思う年齢のほうが、正しいのではないですか?」という答が戻ってきた。
私は日本も、ジンバブエを見倣うべきだと思う。
夫婦仲が睦まじいことも、若さを保つ秘訣である。交情がこまやかであることが、求められる。
イスラエルを訪れたところ、ユダヤ教の高僧(ラビ)から「なぜ、男女は惹(ひ)かれあうか」という話を、教えられた。
ユダヤ教の聖書(分派として生れたキリスト教が、古い約束の『旧約聖書』と呼ぶ)は、神が土から最初の人であったアダムを創り、アダムの伴侶として、アダムが眠っていた時に、胸から肌骨を1本取って、女を創った。そして、イブと名づけた。
「だから男は失った肌骨を取り戻そうとし、女は自分が出てきた男の胸に帰ろうとする」
ユダヤ人は、アインシュタイン、フロイドをはじめとして、全員が謎々を愛好している。頭の体操になるのだ。
ある日、太陽が中天にさしかかったころ、アダムがようやくイブのもとに戻ってきた。朝帰りしたのは、はじめてのことだった。いったい、イブはどうするだろうか?
エデンの園には、アダムとイブの2人しかいないはずだ。答は、「イブはおもむろに、アダムの肌骨の数をかぞえる」というものだ。
誕生会に戻ると、いつものように女優の村松英子ちゃんが、乾杯の発声の労をとってくれた。グラスを挙げる前に、私が元気いっぱいに、世のために尽しているのは、愚妻の「婦徳のおかげ」だと誉めて、恋女房を喜ばせてくれた。わが家では「婦徳」という言葉が、まだ死語になっていないのだ。私のような太陽があるから、月が輝くのだ。
夫婦仲がよいのは、互いによい聞き手であるからだ。辞書を索いてみるがよい。目がついた字といったら、「見(みる)」「眺(ながめる)」「眠」とか別として、「睦(むつむ)」さえ除けば、「眩(めまい)」「昧(くらい)」「瞋(いかる)」とか、碌(ろく)でないものばかりだ。だが、耳となると、「聖(ひじり)」「聰(さとい)」「聴(ゆるす)」「聳(そびえる)」とよいことばかりだ。
官庁の「廰」が略字となったのは、民の声に耳を貸さなくなったからだ。
愚かな人と魚は、口から釣られる。言葉は自己弁護とエゴの主張のために、もっぱら用いられている。国連の討論をみれば、不和の原因であることがわかる。
私たち夫婦の馴れ合いに触れれば、恋はあったが、恋愛はなかった。明治に入って西洋文化によって毒されるまでは、日本の男女のあいだに「愛」はなかった。
西洋でいう「愛」は、キリスト教でいう神と人との取り引きだ。神を讃えることが命じられ、神が引き替えに人を愛して下さる。日本では、夫も妻も子も愛さない。見返りを求めることなく、慈(いつく)しむのだ。だから、グッチィのバッグも、御木本の真珠もいらないのだ。誠(まこと)があればよい。
誕生日は新年と同じように、心身がときめくものだ。節目がなかったら、生活がリズムのない音楽のようになってしまおう。
会場に親しい音楽事務所が差し入れて、若い女性歌手たちが駆けつけてくれた。宴という字は屋根の下に、日のように輝く美女が華(はな)をそえている。人生意を得て、須(すべから)く歓を盡した。
今日は社会がめまぐるしく変化して、落ち着きがない。若者文化である。老人だからといって、敬われない。医療が進歩するかたわら、栄養が格段とよくなったために、長命の社会が到来した。
そのかたわらで、若者たちが贅沢な生活に耽って慾呆けしたために、すっかり老人化している。私たちが頑張らねばなるまい。
忙しいなかを、中島繁治先輩が会場にお運び下さった。宴酣(たけなわ)の時に、愚生に社団法人日本報道協会の会長を引き受けるように耳打ちされた。これまで男子生れて不成名(なをなさず)と歯を食い縛ってきたが、蛟竜(こうりゅう)が雨雲をえて、天に登る心地を味わった。
人は日々、生命を運んでいる。御国(みくに)の御恩を蒙って、誕生日をまた迎えることができた。
今年、馬齢を加えた。人々によって生かされているから、人々を生かすことに努めたい。社会と国に幸せを運ばねばなるまい。
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加瀬英明事務所
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