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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第132号(12月15日)
*金正恩体制の終焉
北朝鮮のナンバー2、張成沢が処刑されたとのニュースは世界中に衝撃を与えたが、マスコミで不思議なほど語られないのが中国の影である。というのも今回の一件は中国抜きにはあり得ない事件なのだ。
北朝鮮上層部は大まかに言って親中派と独立派に大別される。親中派とは経済改革派などと呼ばれる場合もあるが、要するに中国の言う事を聞いて経済支援を貰えばいいと考える人達である。経済優先のように聞こえるが、実は軍内部にも共鳴する者が多い。軍は大量の兵員を養わなくてはならず、破綻した北朝鮮経済の現状では中国からの支援が不可欠なのである。
独立派とは現在の独裁体制の中枢であり、中国から支援は貰おうとはするが、独裁体制の独立は守ろうとする。治安部隊である国家安全保衛部もこれに属する。軍と異なり少数精鋭であり、現体制下で十分な補給を得ている。
金正恩体制はこの二つの派閥のバランスを取って成立している訳だが、北朝鮮の幹部といえども、経済的に困窮すれば中国からともかく支援を貰えばいいと考える筈だから、経済破綻の現状ではおそらく8割方が親中派であろう。
2対8の比率の中でバランスを取るとなれば、必然的に親中派を粛清するしかない訳だ。先代の金正日時代から現金正恩体制に至るまで数多くの粛清が漏れ伝えられたが以上の様な背景であろう。
張成沢は言うまでもなく親中派である。しかし金正恩の義理の叔父であり、後見人とも目されていたナンバー2である。単なる親中派というだけで殺される訳はない。ここで大きく作用しているのは中国の意向である。
金正恩は金正日の三男であり、長男の正男は現在、中国に在住している。本来なら長男が継ぐべき所、父、正日は長男を追放し三男を後継に指名した。何故かと言えば、中国が正男を後継者と見なして早くから取り込み工作をしていたためだ。
つまり北朝鮮の将来の独裁者を中国が飼い慣らして、北朝鮮を中国の従属国にしようとしていたのである。それに気付いた金正日は、中国の息が掛っていない正恩を後継者にした訳だ。
面白くないのは中国だ。せっかくの取り込み工作が水泡に帰してしまい、新しい独裁者は父親譲りの意地っ張りで一向に中国の言う事を聞かない。何とか金正男を北朝鮮に送り返して復権させることは出来ないものかと張成沢に相談したに違いない。
これが露見して処刑された訳だが、一説には今回の事件で2万人以上が粛清されたとも言われる。大規模なクーデタ計画が進行していたと見てもいいかもしれない。
さてこうなると、今後注目されるべきは中朝関係だ。中国は当然支援を減らすであろうが対する北朝鮮は韓国との軍事的緊張を作り出して、「第2次朝鮮戦争は近い」といって中国に支援の増額を要請するというお定まりのパターンを繰り返すだろう。だが果たして中国がそれに乗るかどうか。
むしろ支援が減る事により、北朝鮮上層部にも困窮が広がり、それに応じて親中派が増えれば、また粛清劇を繰り返さなければならなくなろう。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
主著:「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
共著:「総図解よくわかる第二次世界大戦」(新人物往来社)など
監修:「超図解でよくわかる!現代のミサイル」(綜合ムック)
国防・防人チャンネルで「よくわかる!ミサイル白書」配信中
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