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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』
2013/10/17
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FROM 柴山桂太@滋賀大学准教授
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電力システム改革が本格的に始まろうとしています。いま、国会に提出されている電気事業法改正案では、電力自由化や発送電分離の工程表が示されています。実現すれば、電力事業の「戦後最大」の改革となるのは間違いないでしょう。
http://mainichi.jp/select/news/20131015k0000e020082000c.html
言うまでもないことですが、電気はわれわれの生活に深く関わっています。もし大規模な停電が起きれば、日常生活がどれほど麻痺してしまうかを考えれば、明らかです。電車などの移動手段も、携帯やパソコンなどの通信手段も、工場の生産ラインもコンビニやスーパーなどの物流も、電気に深く依存しています。一九世紀の終わりに電気が普及して以後、現代人の生活には欠かせなくなっており、いまやもっとも重要なインフラと言っていいでしょう。
問題は、この分野が純粋な市場競争になじむのか、という点です。現在、日本には10社の電力会社が存在し、地域の電力を独占的に供給しています。確かに価格競争はありませんが、そのかわり、電力会社は安定供給を法律で義務づけられており、送配電網の維持管理も徹底されています。そのため日本の電気料金は、先進国ではやや高い部類に属するものの、停電時間は、世界的に見ても低いことで知られています。
http://www.fepc.or.jp/enterprise/supply/antei/sw_index_02/index.html
電力会社が発電、送配電、小売を一括して行う「垂直統合モデル」が日本の特徴です。これは停電をなるべく少なくし、電力の安定供給を優先するという発想から出てきたものです。
これから始まる電力システム改革は、この体制を変えて、発電と送配電を分離し、新規参入を容易にして企業間の競争を活発にするという内容です。そうなれば、消費者は安い電力を提供してくれる会社と契約するので、選択肢は増えるし価格競争も出てくるだろう、というわけです。
問題は、本当にうまくいくのか、ということです。一九九〇年代から欧米では電力システム改革が進められてきましたが、まったく成功とはほど遠い状況です。まず、どの電気事業者も利益を優先するので、供給余力が減り、送電網の更新が遅れるなどで、停電が起きやすくなってします。加えて電気料金も、各国で値上がりしています。これはよく、二〇〇〇年代の資源ブームで原料となる化石燃料が値上がりしたことが大きいと言われますが、同じ時期、日本の電気料金に変化がないことを考えると、それだけが理由ではないでしょう。
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/shiryo/ryokin-kokusaihikaku.pdf
日本は資源がないので、エネルギーのほぼ全てを輸入に頼っています。資源価格の乱高下がダイレクトに電気料金に反映されないようにするためには、それなりの智恵が必要です。加えて日本では、台風や地震などの天災が多いため、送配電網の維持にコストもかかります。(日本の停電時間が少ないのは、雷などで故障した送電線の修復に、地域の電気事業者が尽力している賜物です。)日本の「垂直統合」モデルは、こうした事情から出てきたものです。
特に送配電網の維持には、非常に高度な技術が必要です。(高度何メートルにもなる鉄塔を上り、故障箇所を修理することの難しさを想像してみてください。)われわれが払う電気料金には、その技術者を育成し、生活を保障する分も含まれています。発送電が分離され、送配電会社が利益を優先するようになった時、果たして現状の安定供給体制は維持できるのでしょうか?
もちろん、現状の体制に問題がないわけではないのでしょう。例えば、電力供給が地域で分断されているために、緊急時に電力会社間で電気を融通する仕組みが未整備で、これは東日本大震災でも問題になりました。今回の電事法改正では、こうした欠陥を補うための「広域系統運用機関」を設置するとしています。この部分は、震災の経験を踏まえれば、必要な改革として議論されるべきでしょう。
いま日本が考えるべきは、予期せぬショックが起きた時に、経済社会の回復を早めるための「レジリエンス」(強靱性)の強化です。そうした方向での改革を議論することには意味があると思います。しかし諸外国の事例を見る限り、電力自由化や発送電分離が、レジリエンスを強化するものとはとても思えません。
いま提出されている法案にしたがって改革が進めば、2016年には電力小売りの全面自由化が、2020年には発送電分離が行わることになります。これによって、電力システムの市場競争は高まりますが、それが本当に日本の国情に合っているのかを、国民はもっと慎重に判断すべきです。消費者の選択肢は増えても、電気料金の価格変動が大きくなり、故障による停電が増えることになれ目もあてられません。
それでも改革が必要だという方は、日本に先行して電力システム改革を行った国で、電気料金の値下がりや安定供給の向上が起きた成功事例を教えて下さい。(いろいろ探しましたが、本当にないんです。)成功する見込みがないのに、それでも正しいと称する理論は、それこそ「机上の空論」というものでしょう。
日本でここ数年、電気料金が上がっているのは事実ですが、それは原発が止まっているからです。電気料金を引き下げたいのなら原発の再稼働を議論すればよい話であって、それを日本の電力システムのせいにするのは筋が違うというものです。
これから改革派は、電気料金の値上がりという国民の不満に便乗して、改革論へと世論を誘導していこうとするでしょう。しかし、それが本当に国益にかなうものなのか、本当に日本経済の強靱性を高めることにつながるのか、よく考えてみる必要があります。
PS
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PPS
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