【アメリカ通信】ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論 | My Flame

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├ 2013年08月23日 ペンタゴンの対中戦略:「エアシーバトル」をめぐる熱い議論
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おくやまです。

先月末に発売した拙訳のエドワード・ルトワックの『自滅する中国』ですが、(http://goo.gl/RDoyP2)
おかげさまで好評をいただきまして、発売一週間ちょっとですでに刷増しとなりました!

この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。

さて、今回の話題は、このルトワック本の中でも紹介されている、米国国防総省(ペンタゴン)の対中戦略にに関するものです。

ルトワック本の後半の章の中には、アメリカの対中方針には大きく三つあると書かれており、それぞれが「財務省」「国務省」、そして「ペンタゴン」の動きに代表される、と指摘されてます。

その中で今回注目したいのは、なんといっても中国に一番タカ派な姿勢をとっている、ペンタゴンの対中政策。

「アメ通」読者のみなさんでしたらすでにご存知かもしれませんが、ペンタゴンは数年前から「エアシー・バトル」(AirSea Battle)という戦術的なコンセプトを、将来に起こりうる中国との闘いのための中心的なアイディアとして、その基本構想を温め続けております。

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「エアシー・バトル」というのは、当初はペンタゴンの外郭団体的なシンクタンクであるCSBAというところを中心にアイディアが出てきた「中国(とイラン)を、空軍と海軍の足の長さを使って叩く」という「戦術」のコンセプトです。

空軍と海軍を闘いに使うわけですから、そのまま「エアシーバトル」というわけです。
けっこう文字通りなのであまりヒネリがないわけですが・・・。

ところがこれは「中国のミサイルが届かない遠いところから中国本土を空・海軍力で叩く」というその戦闘思想の過激さから、それが最初に提案された当初から批判が絶えませんでした。

しかもペンタゴンが2011年8月に専門のオフィス(検討室)を開設して本腰を入れてこの概念の実現に動きはじめたことによって、軍人や戦略関係者の間でも様々な意見が出てきました。

その中で最も目立つのは、なんといっても元海兵隊の将校で、現在はアメリカの国防大学所属の研究員であるトーマス・ハメス(Thomas X. Hammes)の「オフショア・コントロール」(Offshore Control)という戦略を提案した一連の論文です。

この最初のバージョンは、2012年4月にイギリス&イスラエルのオンライン誌である「インフィニティ・ジャーナル」(Infinity Journal)誌に掲載された、「オフショア・コントロール:提案された戦略」(Offshore Control: A Proposed Strategy)というもの。

ちなみにこの「インフィニティ・ジャーナル」というのは、私の元コースメイトたちが多数関わっている、新しくできたネット上の無料の戦略研究専門誌です。

このハメスの「オフショア・コントロール」という新しく提案された戦略ですが、簡単にいえば以下のようなポイントにまとめることができます。

1,エアシー・バトルは「戦略」じゃない、単なる「戦術」だ!
2,だから俺(=ハメス)が新しい「戦略」を考えてやる!
3,「戦略」には「戦争をいかに終わらせるか」という理論も必要でしょ?
4,中国は核を持ってるから、いざ紛争になったとしても核戦争にしちゃいかんだろ。
5,だからエスカレーションの誘発は禁止!中国の領空内には入りません!
6,この戦略の狙いは、中国の海上貿易を阻止しながら同盟国の領土を守ること。
7,決戦は起こすな、経済消耗戦に持ち込んで「行き詰まり状態」にしよう!
8,最後には中国に「花」を持たせて勝利宣言させろ!

ということです。

そしてこれと同じ内容の議論を、ハメスは後に発表した他の論文でも繰り返し強調しております。

つまりこれまでの流れを整理すると、

1,米軍の周辺で、対中国の「エアシー・バトル」の議論が盛り上がる。
2,ハメスが「エアシー・バトルは不十分だ」として「オフショア・コントロール」を提案

という二つの段階があるわけです。

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ところが最近になって、この次の「第三段階」が発動しました。
それは、このハメスの新しい戦略の提案にたいする批判が出てきたことです。

これからご紹介するのは、
アメリカの「ナショナル・インタレスト」(National Interest)誌上で最近行われた、この「オフショア・コントロール」への批判と、それにたいするハメスからの反論という形で行われた、一連の議論の動きです。

ことの発端は、ハメスの論文にたいして、エルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)という元CIA分析官が噛み付いてきたこと。

その批判論文は「エアシー・バトルを恐れるな」(Don’s Sweat AirSea Battle)
※ http://nationalinterest.org/commentary/dont-sweat-airsea-battle-8804
というものでして、その内容をポイントごとにまとめると、

1,経済成長が鈍化しつつある中国でもまだ軍備拡大は続く
2,中国の狙いは自分たちがからむ地域の紛争に第三国である米国の介入を防ぐこと
3,エアシーバトルの肝は、ハイテクで敵深くに侵入して相手のネットワークを叩くこと
4,これに対する批判は多い。たとえば「そもそも米国は中国と戦えない」など。
5,他の批判としては「そんなハイテクには金がかかり過ぎる」というもの。
6,また、核戦争にエスカレートするという危険を指摘する人もいる。
7,そのための代替案がハメスの「オフショア・コントロール」
8,しかしこの戦略の問題は二つある。一つはおそらく効かないこと。
9,もう一つは、うまくやればエアシーも核戦争にはエスカレートしないから
10,たとえば遠距離での海上封鎖なら、中国はその対抗手段を考えるはず
11,また封鎖にはロシアを含んだ多国との協力が必要。
12,感情的に盛り上がってるときに中国を海上封鎖だけで納得させられるか?
13,たとえアメリカにとっては封鎖OKでも、同盟国にとっては?
13,中国が本気になれば同盟国の持つ兵器も上回るはず。
14,米中は互いに核戦争へのエスカレーションを絶対に防ぎたいと考えている
15,とくに中国側はアメリカの核兵器の多さなどに警戒していることは注目。
16,中国はアメリカが核を使用するとは想定しておらず、通常の防空システムを構築中。
17,戦争を避けることばかり考えているのは良くない。平和が欲しければ戦争に備えよ。
18,この意味で、エアシー・バトルは進められるべきだ。

ということになります。

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結局のところは

「そんな都合のよい戦略なんかどうせ効かないのだから、もっと激しく闘うエアシー・バトルでいいんじゃないの」
というハメスに対する批判です。

ところがそれにたいする反論がハメスの方からすぐに出てきました。
しかもこれは、まさに「戦略の階層」がそのまま参考になるやり方での議論なのです。

読者の皆さんには「またかよ!」
とお叱りを受けそうですが・・・・。

これについては長くなりそうなので、続きはまた次回に。

( おくやま )

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日本のメディアで「地政学」という言葉をよくみます。

この言葉の本当の意味は何なのでしょうか? 
そして、そもそも「地政学」とはどういうものなのでしょうか?

「地政学」は一過性のブームなどには全く関係なく、国家が国際社会の中で生き抜くためのツールとして、日本以外の国々では意識的/無意識的に活用され続けている学問です。

そして、昨今の日本周辺の混沌とした国際関係の状況を冷静に分析する上で、非常に役立つものなのです。

地政学とは、グローバル化した時代に、国家が生き残っていくためのツールであり、同時に国家の成功戦略のヒントとして役立つものなのです。

しかし、日本では「地政学」は勉強できません。
「地政学」を専攻できる大学はありません。

そこで、英国にて「地政学」を学んだ奥山真司が“禁断の学問"地政学を復活させるつもりで、語り尽くします。

▼「奥山真司の地政学講座」
http://www.realist.jp/geopolitics.html

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( 編集後記 )

管理人です。

今回のおくやまさんのお話。
面白いですね~。

今回のような、日本の外で熱く闘わされている議論の推移というのは、管理人のように英語が苦手…な者にとっては、なかなか自分の観測アンテナに引っ掛かって来ないので、このような話題は、夢中になって読んでしまいますね。
続きが非常に楽しみです。
※実は、管理人も、「続き」はまだおくやまさんから頂いておりません…
 はやく続きを読ませて下さい!→ おくやまさん!(笑)

しかも、「戦略の階層」だそうなので・・・
とりあえず、例の如く、よろしくお願い致します。(笑)

▼「戦略の階層」を徹底解説するCD
~戦略を語れない人生は奴隷だ~
http://www.realist.…

[続きはコチラから]
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