「これを読んで貰えますか」
机の向かいに座る津島が封筒から便箋を取り出して、机の上に置いた。
便箋は封筒に沿ってきっちりと几帳面に畳まれており、内側に文字が書かれているようだった。
誰が誰に宛てた手紙であることは、封筒に書かれている宛名を読むまでもなく、すぐに判った。
これを読めば益々この男の面倒ごとに首を突っ込むことになることを判ってい居る筈なのに、内側の文字に何が書かれているのか、その好奇心に負けた。
つい、読んでしまったのだ。
しかし、この男が、人のさういう性分すら見越した上でそれを差し出したのであろうことを考えると、大層忌々しい。
私といふ人間を使って、この男は、ちゃっかり何をしようとしているのだ?
津島の心の中のどす黒い部分が垣間見えた心持ちがした。
しかし、手紙の一枚目を読んだ私は、おや、と思わず目を見張った。
其処には、その男のどす黒さとはまた違った雰囲気が漂っていた。
(一枚目)
※ ※
今日も明日も明後日も
どうかあなたが幸せでありますように
あなたのためだったら
この身がどうなろうと構わない
などとは思いません
共に幸せでいられるのが
一番の幸せだし
その道を見つけることから
逃げてはいけないと思うから
※ ※
私は、ほう…と、感心した。
この男と関わる女にしては、随分と、云うことが真っ当ではないか。
この男には勿体ないくらいの知性と品位がある。
「津島君…君は、女と見れば誰でもいいと云う訳でも無かったのか?」
と、思わず呟いた私に、津島は焦燥しきりの疲れた顔で、少し呆れながら反論した。
「先生…それはちょっと、あんまりじゃ無いですか?」
多分一晩有ればある程度書けそうだけど、
明日というか、今日娘のピアノなので寝とこ。