何と言うことだ

語るにも心がかなり揺らいで

語れない焼野原

放射能がくすぶっている中

真っ黒の肉塊と化した

そこいら中に累々とある遺骸

生命をかろうじて取り留めても

真っ赤な血を体中から噴き出しながら

息も絶え絶えの水をくれと言ううめき声も

そこかしこから

救護班はもうてんやわんやの状態

生き残った人たちは

正に入り乱れての修羅場

そんな中を

市街電車は走り出して

 

それは希望への行動

なのか

それとも敢然とした

平和の意志表示なのか

いずれにしても

その意表を衝く動きは

胸を打つ

それは一見無謀にに見えて

そうではないだろう

原爆投下の翌日だ

乗客もごく僅かのはずだ

それでも走ると言うのは

その姿がありありと自分の中を

それも皮膚を一々突き刺すように

行く様が

戦争を体験してもいないのに