ピアノを思えば

彼女の心に触れる

 

こちらが心を込めなくても

彼女は応えてくれる

 

好きな詩人の三木重吉の詩に

『素朴な琴』と題する一編がある

 

(この明るさの中へ

ひとつの素朴な琴をおけば

秋の美しさに耐えかねて

琴はしづかに鳴りいだすだろう)

 

ひとりでに鳴り出している

今日のピアノはすでにそこに

あって

 

心が通い合っていれば

思いは強過ぎも

薄まってもいなくて

 

自分のフィーリングのつばさは

いつでも発進する準備が

 

ピアニストを思う

深くより深く

沁み入って

そして自分の音を織りなして行く

 

ビル・エヴァンスのピアノを

聴こう

滑らかで難解で

波の華のように惹きつける

まずは『枯葉』から

 

今日は

久しぶりに

雲間から日を望もうか