幾つもの影が

見えている

 

その殆どは

わたしの後ろではなく

前にあって

 

さあ来いよとでも

言う感じで

 

わたしには

今三歳の男の子がいる

 

わたしの子供

かけがえのない

 

この子の父親は

或る日突然わたしの前から

姿を消した

 

とっても愛していたのに

何がいけなかったのか

今もよくはーーー

 

この子が二歳の時だった

郷里の両親には

とても言えず

 

だから区役所へ行って

何とか保育施設を

紹介してもらった

 

わたしは働かなくては

ならなかったし

 

今は朝保育園にこの子を

連れて行って

その足で職場へ

 

電車に乗って

四つ目の駅で降りる

そして五分ほど歩く

すると大きな工場が右手に

見えて来る

 

或る車の部品メーカーの

事務として入って

二年目

身も心もリズムが出来ている

 

今出勤途中

電車内に

朝の眩しさ

今日も空が広がって

見ているうちに愛しさが

 

ふっと気の凄く

合ったママ友のことが

 

彼女が好き

恵理香のことを思うと

たまらなくなる

 

勿論愛し合ってる

でもどうしようもなくて

 

同性同士のことは

やっぱり世間では

冷たく見られて

それに彼女には旦那さんがいて

 

あああの子をまだ

郷里の両親には

見せていないからね

 

お盆休みには

帰ってみようかな

 

前の人とあんなことに

なってからわたしは

 

ひたすら走り続けて

来たからね

 

わたしは

電車の音に揺られて

出勤する人いきれの中にあって

 

何とかーーー

 

車内に斜めに

差し込んだ光は

ドアと窓枠のかたちを

すんなり影にしている