ボレロのように近付いて

来る

その音はもともと遠くにあって

 

潮騒のように携えて来る

音色は様々の色合いを帯びて

わたしはとてもそれを看過する

ことなど

 

ひたすら言葉にする日々

なぜならきっとそれを言葉にするのを

望んでいるはずだから

 

夢の呼吸の一時も

時間のおごそかな高低さも問わない

聴こえて来る時が心に響き渡る時

 

さすらってもいない

さりとて希望でもない

無数とも言える音の渦が

 

ピアノの穏やかな

時に激越な高まりによって

聴いているわたしはしだいに

そのミステリアスな渦の中に引き込まれて

今は又近付いて来る

 

弾いているかすかな後ろ姿が

それは多分幾つもの

星たちの瞬きにも似て

自分の希求するひそかな第二の旅人かも知れない

奏し続けてと祈っている