監督のパブロ・ララインは「ダイアナのキャラクターを作っていく上で常に心掛けていたことは、彼女がもつミステリアスな面と脆い面をバランスよく捉えて、彼女の内面的な世界を作り上げることだった。そして彼女の心理を反映させた幻覚や記憶、恐怖や欲望などの要素を描くことによって、美しさを兼ね備えた彼女の特別な“繊細さ”を表現したかった」と語っている。
ダイアナ妃は幼い頃よりバレエを習っており、ダンスを愛していたという事実もよく知られている。人気ドラマ『ザ・クラウン』シーズン4でも大勢の前でダンスを披露するシーンが描かれていた。そのシーンは実際にあった出来事を描いており、2500人もの観客の前で、サプライズでダンスを披露したダイアナに、チャールズは苦虫を噛み潰したような顔をしていたという逸話も…。プリンセスの身では自由に踊ることすらできなかったダイアナ。張り詰めた心を人知れず解きほぐす手段として、宮殿の片隅で踊っていたことがあったかもしれない、とリアルに想像できる演出に切なさを抱かざるを得ないシーンとなっている。
さらにパブロ・ラライン監督はダイアナ役にクリステン・スチュワートを起用した理由に「彼女はこの作品にとても重要な“ミステリー”という、ダイアナとの共通点でもある要素を持ち合わせた数少ない女優だった」と語っている。普段のクリステンはボーイッシュでやんちゃなイメージが強いが、一度役に入ると映像からもわかるようにクリステンの隠し持っていたミステリー要素が、つかめそうでつかめないミステリアスなオーラを放っていたダイアナの姿を想起させる。
クリステン本人はオファーをもらった当初「私がダイアナを演じるなんてクレイジーなの!?」と笑ったらしいが、パブロ・ララインは審美眼を持っていたといえる。
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