前二つのは誤解を招きかねない怪しげなタイトルだったので、
中身そのままでタイトルだけ変えました。
後遺症を残さないために何ができるか?
今日こそいよいよ本丸を攻めていきます。
発症時から順を追って説明していきますね。
本を片手にできるだけわかりやすく短く書いていきます。
(頑張れ私)
今回お話しするのはベル麻痺・ハント症候群の場合の一般的なケースです。
ある日突然発症
↓
即病院へ(顔面神経麻痺の担当は耳鼻咽喉科)
↓
初期治療(数日間の入院または通院※5日〜10日前後)
①ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス剤投与
②ウイルスによる炎症による浮腫を最小限に抑える為に副腎皮質ホルモンの投与(点滴または服薬)
↓
麻痺の症状が固定する5日から7日に検査
①神経損傷の程度を調べる電気生理学的検査
(誘発筋電図 ENoG)
②発症後の回復度をみる点数評価
(柳原法40点、サニーブルック法100点他)
↓
病院によっては点数によって顔面神経減荷術の手術を勧めるところも。(発症7日〜1ヶ月までに行うことが多い)
※私は勧められましたが自らの選択で受けませんでした。
このテーマはいつかまた…。→そのいつかは今!
コチラにアップしました。※限定記事です
さてここからが今回のテーマの本題です。
【急性期リハビリテーション】
(発症1〜2ヶ月)
病的共同運動の元になる神経の迷入再生と表情筋の拘縮をいかに抑制するかが重要となります。
①強く大きい表情筋収縮を避ける 特に重要!
※瞬き・喋る・食べるなどの生理的な表情筋の運動は許容範囲内と言われています。
検査を受けた後などは、自分がどのくらい回復しているかを確認したくて確認したくて、つい同じ表情をしたくなりますが、今はグッと我慢です!ちょっと動き出したくらいの時は特に油断大敵。
炎症による浮腫の圧迫で痛めつけられ損傷した神経も、自分を元通りにしようと健気に再生を始めます。
1日に1mm、1ヶ月で約3cmのスピードで再生が進み、発症3ヶ月ほどで表情筋に到達して、本来の表情筋の動きが回復します。
軽〜中度にあたる大抵の人はこのように順調に自然修復され症状も残りません。
問題なのはそうならないケース。
神経線維の修復が上手くいかず、結果が原状と異なってしまうこと。違う表情筋支配の神経とくっついてしまうのが「迷入再生」という現象です。神経の混線です。
そうなるとどうなるかというと、目を閉じているだけなのに、口も一緒に動いてしまう。口だけ動けばいいのに、目も一緒に閉じてしまう。
これがいわゆる病的共同運動です。
手足を動かす神経ではほとんど起きない、顔面神経独特の現象です。しかも一度繋がってしまった神経を切り離す手段は今のところありません。本当に恐ろしく残酷な現象です。
その神経の混線、そこから繋がる病的共同運動を何としてでも最小限に食い止めようとするのがリハビリの最大目的であり、その中で最も良くないと言われているのが強い表情筋の随意運動なわけです。
いずれにしてもこの時期に表情を作る動きをしていいのは、病院での検査の時だけと思っていて間違いないです。
苦難の時、そして我慢の時です。
続いてその他に参ります。これも大切。
②表情筋の伸張マッサージ=ストレッチを頻繁に行う
瞬き・喋る・食べるなどの生理的な運動を麻痺で動きにくいながらも絶えずしている眼輪筋・口周囲筋と比べてそれ以外の表情筋は頻繁に動かないのでその差を埋める為に短時間でも頻繁なマッサージ=ストレッチが必要です。
顔の半分が動かなくなって、いわば寝たきりのような状態になって、筋肉がどんどん細く固くなっていってしまうことを少しでも防ぐ為のケアです。
神経の再生が混線するのを予防する可能性を上げる効果もあります。
温めて顔面の血流を良くしておくこともこの中に含まれます。
首のストレッチや肩こり体操で頚部の緊張をほぐすことも効果的。
③上眼瞼挙筋を使って眼輪筋の伸張を行う
(眉や額を上げずに眼を見開く)
発症から4ヶ月以降に、口の動きとともに瞼が閉じたり、細まってしまうことを防ぐ為に行う眼を開ける為の練習です。
重要なのは眉や額の筋肉を動かさずに瞼だけ使って眼を大きく見開くこと。
他の筋肉を使って無理に動かそうとすると病的共同運動が強まってしまいます。
そうして発症から丸3ヶ月経過すると、急性期は終わり慢性期に入ります。
【慢性期リハビリテーション】
(発症から4ヶ目以降)
①表情筋の強い随意運動を防ぐ
急性期からの継続です。それだけ重要ということですね。
②表情筋をストレッチして伸張する
(短時間に繰り返し行う)
顔のこわばりが残っているのはストレッチが足りない証拠。
温めも引き続き必須です。顔面部の血流を良くさせます。
冷えは大敵なので、夏場でもマスクや(今全然手に入らないけれど)ストールなどで首から上に当たる冷気をガードします。
③目が小さくなってしまったら…
眼輪筋のマッサージ後に見開きの訓練を行う
④口の動きで目が閉じることを防ぐ
鏡を見ながら目を開けたまま口を動かす
=ミラーバイオフィードバッグ
⑤麻痺側の口角の外側上方(耳の方)への引きつれ…
麻痺のない方の口角の筋肉を引っ張り口唇の左右対称を保つ習慣をつけておく。
慢性期がいつまでなのかということははっきりしていません。
おそらく1年が目安なんだと思います。
(その先も少しずつ回復はしていきます)
以上が発症してから「後遺症を残さないために」行うべき急性期リハビリ・慢性期リハビリのご説明でした。
※鍼の治療について※
「エビデンス」の話になってしまうので、ここでは触れませんでしたが、私は大学病院のリハビリテーション部の鍼灸科にお世話になっています。効果を実感しているので通い続けています。
開業鍼灸院のことはよくわからないのですが、通っている大学病院の鍼灸科の先生から中には顔面神経学会に所属されている鍼灸師がやっているところもあることを聞いています。
そういうところは専門の知識を持って治療にあたってくれるので一定のレベルは保たれ安心かもしれません。(探すのが大変ですが…)
病院と同様、鍼灸院も玉石混合はあるので注意は必要です。
「顔面神経麻痺麻痺を治してきた」と言う先生がいてもほとんどの割合で何かしてもしなくても治るケースのほうが多いのです…。
また電気を流すのもタブーと言われていて私も同意見なのですが、某大学病院の鍼灸科では取り入れているという話も聞いたことがあり、一概には言えないのかなと…判断できないでいます。
実際に見たことがないのであくまで憶測ですが、電気で動かそうと刺激するものではなく、ごく微弱な電流を流して血行を良くするためのものなのかも??
低周波治療みたいに電気でビクッと無理やり動かすのは共通認識でNGだと思うので…。
(筋電図検査でビクッとやるのは検査だから止む無くやっているだけで本当は良くないんだろうな…。)
わからないことが多すぎる顔面神経麻痺…。
究明求む!!
以上ここまで自分が分かる範囲、書ける範囲の最大値で書きました。
今回の情報は信頼している文献を参考にしながら自身の経験に基づいて書いたので、スタンダードな部類に入っているはずで、大筋は外していないと思います。
もちろん病院によって様々だと思うので参考例としてお留めおきください。
読んでみるとこのリハビリ、結構難しくないですか?
そしてお気づきでしょうか?
マッサージ=ストレッチの具体的方法は、あえてここには記していません。
病院によってはこのリハビリ自体にたどり着けない人がいることも知っているので(そういう人は軽症だから医師の判断でそうしているのかもしれないのですが…)自分が貰って毎日使っていた資料を掲載しようかとも思いました。
よかったら自己責任で使ってね!って。
でもやめました。
自己責任!なんて無責任なことは言えないし、
資料に書かれていることは一見簡単なように見えて実際理学療法士さんにやってもらうと、自分でやるのとは微妙に違ったりすることがあるから。
この微妙な違いが後々の大きな差となって表れます。
見よう見まねで行って大きな後悔につながるくらいなら
専門家による本格的な指導を受けて欲しいです。
発症直後の人特に中度〜重度の人は今が本当に勝負時です。
自分は重症かどうかは結構初期のうちに告げられていると思うので、そんな人で十分な指導を受けられていない人は思い切って行動を起こして欲しいです。
今更…とか思わずに。
いつだって今が一番新しい一日なのです。
主治医の先生に専門的なリハビリを受けたいと訴えてください。
そこでは難しいようなら紹介状を書いてもらってください。
すっかり長くなってしまいましたが、
後遺症を極力残さないために
表情筋の強い随意運動をすることの危険性
正しいリハビリを受けることの重要性
この2つをビギナーマヒーズさん(特に中度〜重度さん)に
どうしても知ってもらいたくて書きました。
マヒーズの先輩方、お気づきのことがあったら
コメントでご指摘・お助けいただけるととても嬉しいです
次で私が参考にしてきた本をご紹介して、このテーマを締めくくりたいと思います。
photo by 写真AC
※毎回毎回ホント長すぎて疲れますよねぇ
でもこの記事を読む人は興味がガッツリある人だけだと思ってる。ライトな読者さんはいないと思ってる…。
だから長くなっても書いていく。
酷使した目は優しくケアしてあげてくださいませ。
ではまた後ほど!