旦那 「あ行?か行?さ行?た?な?・・・」
私 うなずく
旦那 「あ、い、う、え、お」
私 うなずく
一般病棟に転棟になったばかりの夫婦の会話
気管切開をし、人工呼吸器につながれていた私は声が出せませんでした。
これを旦那が一文字一文字携帯に打ち込んでいく
そして出来た文章を読み上げて会話をしていました。
最初はそうしていなかったけれど、なかなか伝わらないことなども多かったのと、私が首を縦と横に振るのに疲れてしまい、時間がかかってしまっているうちに「あれっ?最初の文字なんだったっけ?」ということが多かったので。
そして、だんだん口が開くようになってきた私はそこに口パクでさらに伝えようとしました。
「あ、い、う、え、お」そう言うスピードが速すぎると逃してしまって自分の言いたい文字のところでうなずけない、文字が途中までつながると「あ、○○ってこと?」と先読みしてくれるけれど自分の言いたいこととは違う、そんな感じで私がイライラしてしまうこともしょっちゅうありました。
でも、単語から少しずつ、今日あったことや自分が不安なことなどを伝えられるようになっていきました。旦那もあきらめずに私が言いたいことをきちんと伝えられるまで何度も何度もやりなおしてくれて、不安なことなどがあることは看護師さんに伝えてくれたりしていました。
手と足のリハビリも始まっていました。
動けないのでベッドに寝たままでしたが手のリハビリの先生と足のリハビリの先生が別々の時間に来てくれて体をゆっくり動かしてくれました。
そして、私たち夫婦がそんな会話の仕方をしていることを知った手のリハビリの先生がこんなボードを作って来てくれました。
透明なので、話す人にこのボードを持ってもらい私の目の動きを見て文字を読み取ってもらうというものでした。とてもありがたかったです。
そして不思議なことに旦那は私の口パクをだんだん読み取れるようになり、後半はほとんど口パクだけで会話が成立するようになりました。
口パクで話すのはあたりまえですが、口を思い切り開いて言いたい文字の形にして伝える。
体全体を使ってやっている感じで、少し話すとすごく疲れていました。
耳だけで聞いていたテレビも少しずつ見られるようになってきました。
私は早く回復したかったので、なるべくテレビを見て起きていなくちゃ!ずっとうとうとしていたらだめだ!と思い、一日中テレビをつけていてもらいました。
看護師さんやリハビリの先生が病室に来ると、
「ちびまんじゅうさん、テレビのチャンネル変える?」
と言ってくれて、すごく親切に番組表を出してくれて、まだよく見えない私に
「○時からはね、4チャンネルは○○、6チャンネルは○○・・・」
と読み上げてくれて、時々
「あ、今日はもう少しすると○時から○○やるよ!私、あれ好きなんだけどちびまんじゅうさんは?」
などど声をかけてくれていました。
時々、チャンネルを変えられないまま幼児向けのアニメがかかっているときがあり、
「ちびまんじゅうさん、これ見てるの?」
なんて言われることもありました笑
忙しいのにありがたいな、そう思いました。
まだ二重に見えていたし、少し見るととても疲れてしまい、少し目をつぶる。また見るの繰り返し。そのままうとうと寝てしまうことも多かったです。
目で見ることもこんなに疲れることだったんだと思いました。
表情筋もまだあまり働いていなかったので口は動かせていましたが笑ったりすることはできませんでした。
そして意識はと言うとまだまた夢と現実の区別がつかないところがありました。