先月27日のリサイタルでは、多くの方にご来場いただき、まことにありがとうございました。
7月18日土曜日の中日新聞様夕刊10面にて中部日本放送の北島様にレビューをいただきましたので、そのまま掲載させていただきます。



五條園美「吉野山判官桜」
不思議な時間軸、見応え

何回も公演し、能楽堂という会場の効果を知り抜いた五條園美の眼(め)が行き届いた、リサイタルと名乗るにふさわしい公演だった。五題のうち、三題を自身が踊り、四題を振り付けた。(六月二十七日、名古屋能楽堂)
メーンは園美作・構成・振付「吉野山判官(ほうがん)桜」。舞踊「吉野山」の後日譚で、吉野山に迷った静(園美)が桜の精や源九郎狐(きつね)と幻想の一夜を過ごすというもの。
照明(古川靖)の変化につれて、桜の精が夜の妖しさ、朝の爽やかさを表現。鼓を打つと源九郎狐(花柳朱実・賛助出演)が飛び出る。静は源九郎狐が化けた義経との逢瀬(おうせ)を喜ぶが、桜の精に隔てられて倒れ伏し、「吉野山峰の白雪踏み分けて」と舞って終わる。舞は鶴岡八幡宮でのものだろう。そして、この舞のみが現実の時間で、実はすべて「吉野山峰の白雪」に込めた静の幻想だったのではないかと思われた。設定された不思議な時間軸が現代演劇にも通じるような見応えのある創作だった。
園美の振付では、今回、三人(美佳園、園八王、智奈)で踊った地唄「荒れ鼠(ねずみ)」が面白かった。常に中腰という鼠のきつい大勢だが、滑稽味たっぷり。薄暗がりの中、あちこちからちょろちょろといかにも鼠。扇を尻尾にして並んでかじるところは客席から笑い声が起きた。童女(伊藤雅香、田島咲子、市野真衣)の「花くらべ」はトイ(おもちゃ)・ピアノの曲。袿(うちかけ)姿の三人は現実の子どもか、別次元のそれか、あどけなさのうちの妖しささえ感じた。
(北島徹也=CBCテレビ事業部専任部長)