1月8日にコヒーシブシリコン・アナトミカル型が保険適用になった。これで、「シリコン・インプラントによる乳房再建が保険でできるようになった」と言える。

先日、体験者として参加した私の病院の乳房再建講習会の参加人数を見ても、乳房再建への関心の高さ、希望者の急増が窺える。私の病院では、60代、70代の再建希望者が急増しているらしい。乳房への想いは年齢には関係ない。それに、大きなパットを入れての生活は想像している以上に煩わしいようだ。

私は、再建に関しては「私にとっては」想定外の連続で、予想していたスケジュール・イメージとは大幅に違う道のりを歩んだ。いろいろ分かっていく過程で、「私が歩んでいた・歩んでいる道のりは、医師にとっては想定内」と感じるようになった。

多くの乳がん患者を抱える私の病院。理論上では説明できない症例が沢山あることは想像にか難くない。なので、初発の乳がん手術では、癌細胞の取り残しがないように細心の注意が払われ、その結果、侵襲範囲が広めになると理解している。この方針の是非は別として理解はできる。

そして......
乳がん手術での侵襲範囲が広くなると、乳がん手術後に残される皮膚・皮下組織が薄くなったり、そのため乳がん手術の傷口が治りづらかったり、皮膚壊死に繋がったり、デコルテなどの凹みが大きくなったりして、再建、特にシリコン・インプラントでの再建の難易度は上がる。患者は、瘢痕拘縮形成手術やインプラント手術後に脂肪注入を提案されることになる。私のように。

*追記:一次再建の場合、乳がん手術時にできるだけ皮膚を残してくれる。再建をしない場合は切り取ってしまう皮膚も、がん細胞の取り残しがないようにできるだけ皮下組織を取り除いて皮膚を残してしてれる。その結果、皮膚・皮下組織が薄くなることがある、と私は理解している。

どこまで採れば安全か.....
難しい問題だ。
今後、乳腺外科と形成外科の意見交換がもっと活発になり、いろんな改善がなされることを期待している。

そして......
乳がん手術と同時にエキスパンダーを挿入する場合(一次再建。今まで「一期再建」と表現してきたが、「一次再建」が正式名称のようだ)は、次のような事情があると感じている。あくまでも私の見解だが。
★当たり前だが乳がん根治が最優先。一言に「全摘手術」と言っても多種多様。病変の位置・状態・執刀医の方針によって異なる。
★多種多様の全摘手術の後に、形成外科が最善の方法でエキスパンダーを挿入する。
★乳がん手術後の傷口・傷痕は、再建を担当する形成外科が診察・管理するので、「乳がん手術による侵襲範囲が再建に大きく影響している」とうことを患者は忘れやすい。また、形成外科が乳腺外科主導による乳がん手術に言及しづらい場合もあると感じている。
★乳がんの術前説明で、リスクの1つとして「皮膚が壊死する場合がある」と説明を受けるが、一次再建の場合は、皮膚の壊死など術後直後の皮膚トラブルが乳がん手術によるものか、エキスパンダー挿入によるものかが分かりづらいので、また、分かったとしても、形成外科が乳がん手術のことを説明しづらいと感じているので(逆もしかり)、「今後様子を見て......する。心配する必要はない」と対処方法の説明だけになり、「....ために皮膚の状態が......」という原因説明がなされないことが多いと感じる。その結果、患者は不安が募る。


乳がん手術から1年2ヶ月。
「癌根治 vs 美しく再建」を身を以て学んだ。乳がん手術前にこのことを少しでも理解していれば、乳がん手術直後に不安になることはなかったと思う。

でもね、私のシリコン乳房下部の形状の美しさ(くっきりとした乳房下溝線)は、長い道のりを歩んだからこそ得られたものだと感じている。結果論だけど。それから....皮膚・皮下組織は薄いけどね。


参考:「癌根治 vs 美しく再建」を理解するのに参考になる過去記事リンク
★癌根治 VS 再建(乳房の整容性):一期再建手術直後、傷口の治りが悪くなる原因:リンクはここ
★エキスパンダーがある程度膨らまないと、排液量が減らない?ここでも傷口の状態が影響:リンクはここ
★カテゴリ:再建の道のりは人それぞれ(トラブル等):リンクはここ


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